卒業式や入学式は日本人にとって「実害」しかないと断言できる理由

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桜前線の順調な北上とともに、今年も巡り来た入学式シーズン。しかしながら日本における入学式は、子供たちに大きな「実害」をもたらす儀式と言っても過言ではないようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、そう判断せざるを得ない根拠を解説。さらに学習の場である学校に、日本流の入学式や卒業式が不要である理由を詳述しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年3月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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卒業式も入学式も止めてしまえ、というお話

日本は卒業シーズンが一巡して、今度は入学式や入社式のシーズンになります。ところで、こうした「卒業式」や「入学式」というのは、本当に子どもや学生の成長に寄与しているのでしょうか?

この間、パンデミックの時期ということもあって、こうした儀式が簡素化されてきたわけですが、これを機会にもう一度、こうした式の意義について考えてみたいと思います。

ちなみに、「共同体の一員になる儀式」が重視されるために、入学式が重要である日本とは異なって、「出口=個人の達成」の方を重視するアメリカでは、卒業式しかありません。特に入学式というのはなく、どの学校でも新入生にはガイダンスとかオリエンテーションはあっても、歓迎のセレモニーというのはありません。さらに言えば、新卒一括採用がないので、入社式というのもありません。

一方で、アメリカの場合、卒業式は盛大で、高校の卒業式は家族で参加して祝います。大学の卒業式も、大学院の卒業式も、基本的には家族総出で参加します。仕事が忙しいので、親が欠席するようなことは、まずありません。とにかく、子供が大人になるための「達成」だから祝うというのがお約束になっています。

大学の場合は、卒業式の来賓スピーチが特に注目されます。毎年5月が近づくと「某大学では誰々が呼ばれた」というような話題がネットを駆け巡りますし、実際に当日が来ればその「大物」によるスピーチの内容が社会的な関心を集めます。

現在は、オバマ夫妻を筆頭に、引退した政治家や、著名な文化人などが「卒業スピーチ」の人選としては人気です。ちなみに、「卒業生に対してスピーチ」をするという形にすると、主役である卒業生に対して「失礼」ということで、どの大学もゲストには「名誉博士号」を授与して、その授与を記念した講演をさせるというのが建前になっています。

有名なところでは、亡くなったスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った2005年のスピーチがあります。このスピーチは当時の多くの若者の心を揺さぶり、その後、比較的すぐにジョブズが他界したことから、伝説にもなっています。

特に、有名なのは “Stay Hungry! Stay Follish!” というメッセージです。ちなみに、このフレーズのことを「ハングリーであれ。愚直であれ。」という「訳」が出回っていますが、そんなに「お行儀の良い」内容ではありません。強いて言えば「渇望せよ。逸脱せよ。」というニュアンスだと思います。

その少し前の

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life. Don’t be trapped by dogma, which is living with the results of other people’s thinking. Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.

 

オレ達の時間は限られている。だから自分の人生を生きるんだ。他人の人生のために生きではダメだ。ドグマに束縛されるな。何故ならばドグマというのは他人の思考の結果に過ぎないからだ。他人の余計な雑音に邪魔されて、自身の内なる声が掻き消されないようにせよ。何よりも自身のハートと直感に従って生きる勇気を持て。君たちが何を為したいのかは、既にそこでしっかりと認識されているからだ。その他のことは、人生にとって大したことじゃない。(筆者意訳)

などというあたりも、凄い表現だと思います。恐らくは死期を悟っていたであろう天才の魂の言葉とでも言えるでしょう。

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