プーチン蛮行が引き金に。終わる「米国覇権」と進む「新世界秩序」形成

 

「戦争の時代」が新世界秩序を誘導する

露ラブロフ外相は中国とインドを訪問した。ロシア経済維持のために、ガスと石油を売り込んでいる。石油1バーレルが35ドルという魅力ある価格で提供するために、インドも中国も大量買いに走っている。それも決済は、ルーブルや、ルピー、人民元建てという。

また、プーチン大統領は、非友好諸国に対して天然ガスの代金をルーブルで払えと宣言した。

そして、ロシアの売り込みに、危機を感じたサウジは、原油を人民元建てで売ると中国に提案している。

今まで、ドルが基軸通貨である理由は、原油売買が基本的にドル決済であることだが、このドルと原油のつながりがなくなることを意味している。

もう1つが、ドルの基軸通貨としては、米国国債の保持で外貨準備をした方が、流動性が高く、売りやすいこともあったが、米国のドル決済禁止との制裁をGDP11位のロシアに行ったことで、今後、中国でも米国債を買う動機がなくなる。ドルでの外貨準備が意味を持たないことになる。

そして、ロシアへの制裁を行う国は、欧米日韓台など西側諸国だけであり、世界の多くの国は制裁に加わらない。このため、世界的にドル建ての外貨準備をする国は減る方向で、特に世界に多い専制国では、人民元での外貨準備などになる。

特に中東では、今まで米友好国と思われたサウジやイスラエルが、ロシアに配慮している。米国は自国の石油と天然ガスで自給できるので、中東から米軍を撤退させたことが大きい。

このため、サウジとイスラエルはイランとの対決で、ロシアを頼るしかなく、脱米国になっている。米国の誤算であり、対中シフトしたことで、中東諸国の支持を失った。このため、原油とドルの結びつきもなくなり、ドル基軸通貨制度も危機になっている。

しかし、今後、原油から再生可能エネルギーにシフトするが、端境期には、混乱が生じる。その1つが、ロシアの危機感であり、それでウクライナに侵略したが、ドル基軸通貨制度も危機に直面している。

米国の覇権は、ドル基軸通貨制度によるので、この崩壊は米国の覇権の危機でもある。

もう1つが、米国や日本、欧州などの金融緩和で、通貨価値が著しく低下して、それが原因でインフレになっている。このため、ドルなどの通貨全体の信任も落ちてきた。

この原因は、国内経済の活性化で自国通貨を大量に国民にバラまいたことであり、世界基軸通貨は、どこかの国の通貨ではなく、価値が減少しない通貨にして、そのために政治家の人気取りができない必要がある。

しかし、このような世界的に信任される通貨が現在ない。一時、仮想通貨であると言われたが、価値の変動が大きく、信任を得ることはできなかった。

残すは、商品バスケットに連動した通貨しかない。金に連動した仮想通貨などが出ているが、それでも小麦や原油の物価変動に弱いので、このため、複数の商品の平均値に連動した通貨が次の通貨制度の形になるのではないかと思う。

これを米欧日など民主国家の国際組織が今のIMFのような組織を作り、世界基軸通貨として規定することである。ということで、世界基軸通貨制度になる。IMFと同様に各国が資金を出し合い、設立するしかない。

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