「親分の国」も「商人の国」も、安定より“不安定”を求めるワケ

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文明が発達した現代でも国家間の戦争がなくならないのはなぜなのでしょうか。国家を支配者の側から見ると、不安定な方が人をコントロールしやすく、結果として支配者の地位が安定するという考えがあるようです。メルマガ『j-fashion journal』で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、「親分の国」同士による力の争いばかりだった世界に「商人の国」ができてからは、複雑な努力によって不安定な状態を作り、争うことで成長の糧にしていると解説。日本のような「平和な国」は成長を捨てることで成立し、今後も「平和な国」を望むなら、ある覚悟が必要になると持論を述べています。

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「親分の国」と「商人の国」

1.力で支配する親分の国

昔昔、世界の多くの国は親分の国でした。親分は特定の地域を自分の縄張りとして支配します。そのためには力が必要です。敵が攻めてきたら対抗して追い返す。縄張りの住民が親分に逆らったら、暴力、軍事力あるいは経済力を駆使して押さえつける。

親分の国は力が全てなので、当然強い親分は尊敬されます。また、親分も自分を神格化、偶像化し、人々に尊敬するように働きかけます。勿論、親分も最終的には死期を迎えるので、支配は永遠ではありません。後継者問題が生じることもあるでしょうし、力のある挑戦者が現れることもあるでしょう。いずれにしても、親分は代替わりしていきます。

親分の国は基本的に自給自足です。縄張りの中で取れる食料の量で縄張りの人口が決まります。豊かな土地なら住民は多くなるし、食料が不足している貧しい土地なら住民の人口は少ないままです。もし、人口が増えて食料がなくなれば、自然の人口調節に委ねるか、周辺の縄張りを侵略することになります。土地、家畜、食料を奪い、住民を殺すか、奴隷にします。

親分は常に力で支配し、常に緊張し、戦っています。平和とは束の間の戦争と戦争の狭間に過ぎません。

2.お金で支配する商人の国

親分の国も縄張りが広くなると、一人の親分のカリスマ性だけで統治するのが難しくなります。また、世の中の仕組みも次第に複雑になるので、それぞれの分野の専門家が必要になります。

科学技術が発達し、食料が増産できるようになると人口が増えます。こうなると、組織化された官僚の集団が具体的な統治をするようになります。親分は力だけではなく、組織を統率する力が必要になります。企業で言えば、創業者から二代目、三代目の経営者になるイメージでしょうか。

貿易が始まり、貨幣経済が支配的になると、自給自足経済圏から広域経済圏へと移行します。こうなると、次第に商人が力を持つようになります。商人はお金をコントロールすることで支配力を強めていきます。お金の力で親分に取り入り、影の支配者となります。あるいは、お金で国民を誘導し、実質的に商人が支配する国が誕生します。

商人の支配は、親分のように個人が目立つ必要はありません。むしろ、目立たない方が安全です。商人は儲かる仕組みと組織を作って、それをコントロールします。

例えば、お金の力で選挙をコントロールする。あるいは、お金の力でマスコミをコントロールする。お金の力で対立や分断を作り、互いの勢力を拮抗させることで、戦争や紛争で稼ぐ。人間の生活に欠かせない、エネルギーと貨幣をコントロールする仕組みを作って、それを支配する。

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