小泉悠氏がシミュレーション。ロシアの北海道侵攻はあり得るのか?

 

「FSBレター」に見える日本観

この点は、最近話題の「FSBレター」からも見て取れます。今回の戦争に際してFSB(連邦保安庁)の分析官が外部に書き送っているとされるもので、3月22日に公表された書簡(執筆の日付は3月17日とされている)ではロシアがウクライナの代わりに日本と戦争を始めるつもりであったとされています。

Vladimir Osechkin(Facebook)

大要は次のとおり。

  • ロシアは2021年8月に日本との局地戦争を真剣に考慮していた
  • 2023年に習近平の三期目が決まる頃に米中対立はピークに達する筈であり、ここでは日本を対中戦略により深く引き込む必要がある。そのためには日本に大きな借りを作らせる必要がある。すなわち、米国の力で北方領土を奪還するということである
  • また、このとき、アメリカはアフガニスタンで無様な敗北を喫したが、そこで国内の目をアジアに向けさせる必要性が生じた。これによってクレムリンは、米国が北方領土奪還という計画を早めるだろうと判断した
  • そこでロシア側は先手を打って日本を攻撃することにした。クレムリンは、米国に協力する国はみんなロシアを攻撃しようとしていると思うのだ
  • この時期、ロシアが日本軍によるソ連兵捕虜への生物兵器の人体実験を暴露したことや、北方領土にMi-8MTPR-1電子戦ヘリを配備したことはこれらの動きに関連している
  • しかし、電撃的な勝利の確信が得られないために計画は中止された

要するに米中対立の激化に日本を引き込み、アフガニスタンでの敗北を糊塗するために米国が日露戦争を煽ろうとしていると見たロシアが、先制攻撃を企んでいたということです。

ここには二つの問題があります。たしかにロシアのパラノイア的な世界観とか過剰な防衛意識というのは同意できる点がないのではないのですが、現実にロシアがそのような作戦を準備していた、という感じがどうにもしないのです。これが第一の点です。

(メルマガ『小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略』2022年4月25日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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  • 第173号(2022年4月18日)北朝鮮の戦術核と強化されるウクライナ援助の行方(4/18)
  • 第172号(2022年4月10日)「戦費でロシアが破産」論を考える(4/11)
  • 第171号(2022年4月4日) キエフを守り切ったウクライナとロシアの出方(4/4)

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▼2022年3月
・第170号 苦戦続くロシア、粘るウクライナ、踏み込めない西側(3/28)
・第169号 ロシアの非核エスカレーション抑止攻撃(3/21)
・第168号 ウクライナ戦争三週間 核エスカレーションと北方領土(3/14)
・第167号 ウクライナ軍は何故善戦できているのか(3/7)

圧倒的な兵力を誇るロシア軍の侵攻を受けるも、徹底抗戦の構えを崩さないウクライナ。3月に配信された4通のメルマガでは、ロシアの軍事・安全保障政策の専門家として、ウクライナ軍善戦の理由をあらゆる角度から徹底分析してきました。
開戦から1ヶ月を過ぎた3/28号では、ロシア国防省による「北方領土で3,000人動員の軍事演習開始」を伝えるニュースを紹介するとともに、その真偽を検証。ロシア側の発表や衛星画像から動員数を額面通りに受け取ることは難しいと結論付けています。興味深いのは、「ロシアが演習の規模を盛るのは別に珍しいことではない」という事実。毎号こうした「専門家だからこそ知りうる情報」が紹介されているのもこのメルマガの特徴のひとつです。
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▼2022年2月
・第166号 ついに始まってしまったウクライナ侵攻(2/28)
・第165号 ウクライナ危機を巡る「プーチンのジェットコースター」(2/21)
・第164号 ウクライナ危機が新たなフェーズへ(2/14)
・第163号 ロシア軍集結、ウクライナ軍増強、ベラルーシは非核・中立放棄へ(2/7)

さる2月24日、ロシアはついにウクライナに侵攻を開始。日本の報道で「ロシアのウクライナ侵攻はあり得ない」といった論調も根強くあったなか、本メルマガでは逐一、海外報道や公開情報をもとに「開戦前夜」の緊迫した情勢を伝えていました。
開戦直後の2/28号では、ゼレンスキー大統領の巧みな「ハイブリッド戦争」を分析。敵・味方・中立のオーディエンスに対し戦争を有利な形で認識させ、戦闘での勝敗とは別の領域で最終的に勝利しようとする思想。先日の国会演説もこの一環だとすれば、ゼレンスキー氏は孤立を深めるプーチンより何枚も上手、すでに私たち日本国民もその術中にあるのかもしれませんね。
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▼2022年1月
・第162号 OSINT新時代 力の論理とわたしたち ほか(1/31)
・第161号 大谷翔平は野球をサッカーに変えるか ほか(1/24)
・第160号 西側との対話決裂 考えられるオプション ほか(1/17)

本メルマガでも活用されている、OSINT=オシント(Open Source Intelligence=公開情報インテリジェンス)という概念をご存じでしょうか?有識者やインサイダーの人物から秘密情報を入手する「ヒューミント」に対し、オシントが対象とするのは公開情報。誰もが容易に入手できる公開情報でも、複数を丹念に付き合わせ行間まで分析することで、対象国の政治的な真意を読み解くことができるとされます。
1/31号によれば、最近このオシントの適用範囲が大幅に拡大しているとのこと。その最新の手法とは?ロシア・ウクライナをはじめとする国際情勢はもちろん、ビジネス分野にも応用できそうです。
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▼2021年12月
・第159号 ウクライナを巡るロシアの「二重のメッセージ」 太平洋艦隊の原潜増勢(12/27)
・第158号  NATO不拡大に関するロシア提案 戦略ロケット軍記念日 ほか(12/20)
・第157号 ロシア軍次期装備計画詳細 参謀総長の語る国際情勢 ほか(12/13)
・第156号 ロシア軍のオホーツク防衛大演習 ウクライナ侵攻の現実味 ほか(12/6)

 
核弾道ミサイルを運用する、ロシア軍の戦略任務ロケット部隊(RVSN)の実力とは? 12/20号では、創立62周年を迎えた同部隊カラカエフ司令官のインタビュー(機関紙『赤い星』掲載)から、興味深い発言をピックアップしてご紹介。「当面は核抑止力を維持するために必要な運搬手段を戦闘準備状態に置き続ける」とする同部隊の今後の計画、米国が欧州で展開しているミサイル防衛(MD)システムへの対抗策や、新型ICBMの開発進捗など、世界が「ロシアの核」に注目する今こそ必読の内容となっています。
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▼2021年11月
・第155号 現実味を増すロシアのウクライナ侵攻シナリオ 猫と暮らせば ほか(11/29)
・第154号 中露爆撃機尖閣接近の意味 松輪島に新基地が出現(11/22)
・第153号 ロシアがベラルーシと核シェアリング?ほか(11/15)
・第152号 中露軍事協力との向き合い方、ベラルーシと新「共通軍事ドクトリン」(11/8)
・第151号 シリアでのロシア航空部隊大規模展開 地対艦ミサイルの「艦隊間移動」ほか(11/1)
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▼2021年10月
・第150号 中露艦隊日本一周、アフガン情勢とロシア、核兵器禁止条約 ほか(10/25)
・第149号 日本海での米中露つばぜり合い ほか(10/18)
・第148号 ロシア軍の「北極艦隊」構想 ほか(10/11)
・第147号 ロシア軍のオホーツク防衛戦略と日本(10/4)
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▼2021年9月
・第146号 ロシア軍西部大演習を巡る国際関係 ほか(9/27)
・第145号 日本に求められるシンクタンク像 ほか(9/13)
・第144号 ロシア新国家安全保障戦略その3 ロシア軍の大規模予備役動員 ほか(9/6)
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▼2021年8月
・第143号 ロシアの武器輸出 サハリンに新型レーダー 人をダメにするソファ(8/30)
・第142号 ハイブリッド戦争としての対テロ戦 トルコにS-400追加供給?ほか(8/23)
・第141号 タリバンとロシア 反射的コントロールとは ほか(8/16)
・(号外)暑中お見舞い申し上げます (8/9)
・第140号 ロシアの新国家安保戦略その2 アフガン不安定化と旧ソ連諸国(8/2)
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▼2021年7月
・第139号 夏休み読書企画「新しい戦争」論を掴む(7/26)
・第138号 ロシアの新国家安全保障戦略、中央アジアへの米軍展開問題 ほか(7/19)
・第137号 ロシア「原子力魚雷」の正体は?(7/12)
・第136号 クリミア沖での英露鍔迫り合い、ロシアの新型弾道ミサイル ほか(7/5)
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▼2021年6月
・第135号 北方領土大演習、米露軍備管理、新しい戦争、大国との張り合い方(6/28)
・第134号 北方領土での爆撃訓練 「ナワリヌイの乱」後編 ほか(6/21)
・第133号 ナワリヌイの乱総括、北極に戦闘機配備、太平洋艦隊大演習(6/14)
・第132号 北極は燃えているか(多分燃えていないという話)(6/7)
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▼2021年5月
・第131号 ベラルーシ強制着陸事件が脅かす国際秩序(5/31)
・第130号 新テクノロジーと戦争、北極の三つ葉 ほか(5/24)
・第129号 少子化に直面するロシア軍 さよならマキエンコ(5/17)
・第128号 『現代ロシアの軍事戦略』を語る(5/10)
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▼2021年4月
・第127号 苦しいロシアの軍需産業 プーチン教書演説 ほか(4/26)
・第126号 ウクライナ企業を狙う中国思惑 ロシア軍のロボット化部隊 ほか(4/19)
・第125号 ロシアはウクライナとの戦端を開くか(4/12)
・第124号 ロシアの対宇宙作戦能力、新型ICBM ほか(4/5)
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▼2021年3月
・第123号 北朝鮮の新型ミサイルを巡る謎 ほか(3/29)
・第122号 対露「コスト賦課」戦略 ロシア軍の「本当の兵力」ほか(3/22)
・第121号 春休み読書企画 戦争について考える(3/15)
・第120号 第二次ナゴルノ・カラバフ戦争を指揮したのはトルコ軍?(3/8)
・第119号 ロシア製ミサイルを巡ってアルメニア内政が混乱(3/1)

 

 

image by: Twitter(@Defence of Ukraine

小泉悠この著者の記事一覧

千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了(政治学修士)。外務省国際情報統括官組織で専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所特別研究員などを務めたのち、現在は東京大学先端科学技術研究センター特任助教。

 

ロシアの軍事や安全保障についてのウォッチを続けてきました。ここでは私の専門分野を中心に、ロシアという一見わかりにくい国を読み解くヒントを提供していきたいと思っています。

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