山中氏は、出馬会見を行った6月30日の翌日から、連日、横浜市内で、衆議院議員や立候補予定者らとともに、「8月22日 横浜市長選挙」と明示し、ノボリや横断幕を使った街頭活動を繰り返し、SNSなどで、街頭活動の写真がアップされ「露骨な事前運動」と批判されていた。
しかも、そこでは、「医学部教授」「コロナの専門家」などと大書して、「医師で医学の専門家」であるかのようにアピールし、「山中氏が市長になったら、コロナが収束」するなどという街頭演説を繰り返したものだった(山中氏は「医療統計の専門家」であり、医師でも、コロナの専門家でもない)。
横浜市長選は、当時の菅首相が全面支援した小此木氏が、コロナ感染急拡大の猛烈な逆風を受けたことから、野党統一候補の山中氏の圧勝に終わった。それは、そのような「露骨な事前運動」「有権者を騙す行為」を、平然とやり抜いたことが、当選という結果をもたらしたとも言える。
山中氏が、選挙の投開票日、当選後のインタビューで、選挙期間は告示から投票日までの14日間であるのにもかかわらず、「54日間の選挙運動を戦い抜いた」などと平然と発言していたことからも、そもそも「事前運動の禁止」など全く意識していなかったようにも思える。
山中氏は、当選後に山中氏のパワハラ、不当圧力、経歴詐称等の問題が噴出し、通常、野党系の市長が誕生しても、短期間で自公両党との関係構築が図られていたのに、今回は、市長と自公両党との関係は、最悪の状態が続いている。
さらに、山中市長は、市長選挙で公約に掲げた「敬老パス自己負担ゼロ」、「子供の医療費ゼロ」、「出産費用ゼロの」の「3つのゼロ」と中学校給食の全員実施について予算化を見送るなどして、市民の失望を買っている。
このような山中市長を誕生させたことについて、立憲民主党の「製造物責任」を問う声が高まる中で衆院選を迎え、横浜市内の小選挙区のほとんどで落選するという、衆院選での立憲民主党敗北を象徴する選挙結果となった。
「露骨な事前運動」をものともせず、やり抜いた候補者が当選したことが、横浜市では「新市政」をめぐる惨憺たる状況を招いているのである。
自らの選挙において「事前運動」に対してどのような姿勢をとるのかという点に表れる候補者の品格、誠実さ、有権者は、そういう視点から、候補者を評価することも必要だろう。
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