維新・前川議員は公選法違反か否か。元検事が解説する「2つの争点」

 

公選法の規定との関係

「事前運動」に当たるとの検察の起訴と、これに対する前川議員の主張のいずれが正しいのか、今後の公判では争われることになるが、若干の解説をしておこう。

まず、前川氏が、「公職選挙法は届出前の投票依頼を禁止しているに過ぎず」と述べている点は、若干不正確だ。前記の公選法の規定は、「選挙運動」の期間を制限しているのであり、届出前の「投票依頼」だけを禁止しているのではない。「選挙運動」の中心と言うべき「投票依頼」に該当すれば、「選挙運動」に該当することは明らかであるが、「投票依頼」に該当しないからと言って「選挙運動」であることが否定されるわけではない。

もっとも、「公職選挙法一四二条一項は、同条項各号所定の通常葉書を除いて、前記説示の意義における文書を選挙運動として頒布することを禁止したものであり、これを選挙運動の準備行為として頒布することまで禁止したものではないと解すべきである。」とする判例(最判昭和44年3月18日)があり、この判例により、「選挙運動の準備行為」に該当すると認められれば、「選挙運動」には該当せず、届出前に行っても違法ではないとされることになる。

しかし、上記判例で言うところの「準備行為」には該当しないとしても、前川氏が憲法上保障されていると主張する「政治活動」であれば、「選挙運動」に該当しないとは必ずしも言えない。

判例では、「選挙運動」について、「特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者のため投票を得又は得させる目的をもつて、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいう」とされているが、公職選挙の届出前に、特定の公職選挙の公示、告示前に、特定の候補者の支持拡大をめざして行われている「政治活動」のうち、どの範囲が「選挙運動」に該当し、事前運動の禁止に違反することになるのかが、不明確であることは確かである。

「選挙運動」の定義が曖昧なまま、それを届出前に行う「特定の選挙に向けての政治活動」の中でどこまでが「政治活動」として許容され、どこからが「事前運動」として犯罪に該当することになるのか、その境目が曖昧であることは、「罪刑法定主義」との関係で問題があるのではないかとの前川氏の主張も理解できないでもない。

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