維新・前川議員は公選法違反か否か。元検事が解説する「2つの争点」

 

この事件の2つの争点

そこで、この事件についての争点は、次の2つに整理することができる。

第1に、「選挙はがきご協力のお願い」の送付が、判例上の「選挙運動の準備行為」に過ぎないので、「選挙運動」には該当しないと言えるかどうかである。「準備行為」は、「投票依頼」には該当せず、「投票を得る目的で行われる『選挙運動』」にも当たらないとされるのは、基本的には、「選挙に向けての準備」というのは当該候補者の陣営内部で行われるものであり、それは、有権者に対して行うという要素が希薄だからである。

そういう意味では、前川議員が主張するように、「選挙はがきご協力のお願い」の送付先の35名が、陣営内部者と同視できるような関係だったと言えるかどうかが問題になる。この点、上記(3)で前川氏が「同窓会とのかねてからの親密な関係」を強調しているのは、「選挙はがきご協力のお願い」を同窓会関係者に送付した行為は、陣営内部者と同視できるような関係だったと言いたいからであろう。

実際に、そのような「陣営内部者と同視できるような関係」だったと言えるのかどうか、前川氏の公選法違反事件の公判での争点になるものと思われる。

第2に、「選挙はがきご協力のお願い」が、判例で言うところの「選挙運動の準備行為」に当たらないとしても、それが「政治活動」として許容される余地はないのか、という点である。

るようにも思える「事前運動」の中で、今回の前川氏の行為が、特に処罰の対象とされるのは不当ではないかという前川氏の主張も理解できなくはない。

そういう前川氏が、届出前の選挙に向けての活動において、「事前運動禁止のルール」をどのように意識し、どのような姿勢で臨んでいたのかが、公判で問われることになるであろう。「事前運動」の規制が罪刑法定主義に反するのではないか、という主張も、前川氏が、基本的には「事前運動禁止のルール」の趣旨に沿った対応をしていたと言える場合に、相応の説得力を持つことになるだろう。

「事前運動」禁止を尊重する姿勢

選挙に立候補する意思をもって活動していく立候補予定者にとって、いかにして自らの知名度を高め、支持を拡大していくのかは、極めて重要な問題である。それを、公選法の事前運動禁止のルールに違反しない範囲で行っていく姿勢が求められる。そこには、公職をめざす者としての「品格」が表れると言える。

そういう意味で「極端な事例」と言えるのが、昨年夏の横浜市長選挙における山中竹春氏と同氏を擁立した立憲民主党が行った告示前の街頭活動だ。

「事前運動」の禁止をものともせず、当選のためならなりふり構わずにやり抜くという姿勢が、如実に表れたものだった。その根本にある公職の候補者としての「品格」の欠如は、当選するためであれば有権者を騙すことも平然と行うという姿勢にも通ずるものだった。

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