人間性が欠けた独裁者。「プーチン帝国」ロシアを世界が見殺しにする日

 

2014年のウクライナ危機は、ロシアが南部クリミア半島を併合したことから始まった。首都キーウで当時の親ロシア政権に抗議する市民に治安部隊が発砲し100人以上の犠牲者を出した。これを機に親ロシア派の大統領が逃亡してしまい、政権が崩壊した。これに危機感を持ったプーチン大統領が南部クリミア半島を併合し、さらに東部では親ロシア派の武装勢力が多くの市町村を占拠してウクライナ軍と武力闘争となり犠牲者が1万4.000人に上ったのである。

親ロシア派勢力の強かったクリミア半島で、プーチンの支援もあってクリミアはウクライナから独立しロシアへの編入を宣言するが、ウクライナは「もともとクリミアはウクライナの領土だった。その後、ロシアが占拠したためロシアに編入された」と反発し、現在も紛争状態が続いている。

また親ロシア派勢力の武装蜂起はロシア系住民の多い東部ドンバス地方にも飛び火、ドンバス地方の親ロシア派勢力は、ウクライナから独立した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を一方的に設立し、ロシアへの編入を求めて、ロシアはこれを承認した。しかし、ウクライナは認めておらず戦争状態が続いている。結局、ウクライナでは首都キーウとその近郊やクリミア半島などで8年以上にわたってロシアとの戦闘が続いているのである。

また、ロシア・ウクライナ戦争で最も悲惨な闘いとなったのが、ウクライナ東部マリウポリにあるアゾフスターリ製鉄所の攻防で、2ヵ月に及んでロシア軍の包囲が続いている。

中に閉じ込められた民間人は、4月30日から5月1日にかけ初めて停戦協定が成立し、ようやく第一陣として101人が退避を終えた。しかしロシア軍は2日に再び総攻撃を始めたのだ。ロシア国防省は「停戦を利用して敵が交戦態勢に入ったためだ」という理屈で攻撃を再開した。その結果、ロシア軍が製鉄所へ再び突入し戦闘が始まった。部屋には2人の女性の遺体が横たわっており、子供たちがうずくまっていた。目撃者によると「2人の女性は台所で作業をしており、その区画には民間人だけしかいなかった」という。

ウクライナの赤十字委員会によると「地下空間に広がる製鉄所内の民間人は300人程度だったが、子供も30人位いる。市内の攻撃が激しくなるにつれて、避難者が増え、ウクライナ守備隊の負傷兵500人も治療を待っていた。製鉄所内では極度に物資が不足しており、何度も救出作戦を行なうべきだ」と訴えている。

プーチンは製鉄所内に逃げ込んだ民間人の退避について、国連と赤十字国際委員会が取り組むことを原則的に受け入れると表明しているが、プーチンの約束をどこまで信用できるか?グテーレス国連事務総長がウクライナとロシアの停戦について話合いに行ったが、プーチンに一方的にまくし立てられ停戦提案もできなかったという。もともとグテーレス総長も腹の座った男に見えないので、強く反論もできなかったのだろう。

ウクライナとロシアの双方は7日、避難が完了したと明らかにしていたが、まだ少なくとも数十人の市民が地下に残っているという話もある。

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