レジ袋有料化も意味無し?空気中にも漂うマイクロプラスチックの恐怖

 

そして、この驚愕の報告に続き、1カ月後の2018年10月に発表されたのが「世界で販売されている9割の食塩からマイクロプラスチックを検出」という、これまた驚愕の報告だった。これは数年前、海水から精製された食塩から初めてマイクロプラスチックが検出されたことを受けて、韓国の仁川(インチョン)大学の海洋科学者、キム・スンギュ教授の研究チームと国際環境NGO「グリーンピース東アジア」の合同チームが行なった世界規模の調査だ。

合同チームは、欧州、北米、南米、アフリカ、アジアの合計21カ国から集めた市販の海塩、湖塩、岩塩、計39銘柄を分析した結果、92%に当たる36銘柄からマイクロプラスチックが検出された。そして、マイクロプラスチックの含有量を地域別で比較すると、アジアの食塩の含有量が突出していた。中でも最大の含有量だったのがインドネシアの海塩なんだけど、インドネシアと言えば、プラスチックごみによる海洋汚染が世界ワースト1位の中国に次いで、世界ワースト2位の国だ。

まあ、当たり前っちゃ当たり前のことだけど、インドネシアに限らず、プラスチックごみによる海洋汚染がワーストランキング上位の国で製造されている海塩は、どれもマイクロプラスチックの含有量が多い。その一方で、プラスチックごみによる海洋汚染などない国の海塩からも、マイクロプラスチックが検出されている例が数多くある。これは、すでにマイクロプラスチックが海流に乗って世界中へ拡散してしまっていることの証左にほかならない。

また、この調査では、海塩だけでなく、湖塩や岩塩からもマイクロプラスチックが検出されている。これは、最初に書いたように、海流に乗って世界中へ拡散したマイクロプラスチックが、水蒸気と一緒に蒸発し、雨に混じって世界中の野山や田畑、水源地などへ降りそそいでいることを意味している。そして、その水源地へ降りそそいだマイクロプラスチックが、世界各国のミネラルウォーターの9割以上を汚染しているのだから、それこそハンパな量じゃないだろう。

…そんなわけで、2018年9月の「市販のミネラルウォーターの93%にマイクロプラスチックが混入」、翌10月の「市販の食塩の92%にマイクロプラスチックが混入」という報告に続き、さらに翌11月に発表されたのが「ホタテガイの全身にマイクロプラスチック残留の可能性」という、これまたゾッとする報告だった。ただし、これは、水揚げされたホタテガイからマイクロプラスチックが検出された、という話じゃない。ムール貝を始め、様々な食用の貝からマイクロプラスチックが検出されるという事例が相次いでいたため、貝類がどのようにマイクロプラスチックを摂取するかを研究したものだ。

イギリスのプリマス大学国際海洋研究センターのリチャード・トンプソン所長がリーダーとなり、スコットランドやカナダの海洋科学者も招いた研究チームは、英国沖で採取したマイクロプラスチックを含有していないヨーロッパホタテガイを使い、マイクロプラスチックの摂取状況を調査した。まず、追跡可能なラベル付きのナノサイズのマイクロプラスチックを用意し、ホタテガイが生息する海域のプラスチック濃度と同じ濃度の海水を水槽に作り、そこにホタテガイを入れた。

すると、ウイルスほどの大きさの24ナノメートルのでマイクロプラスチックは、わずか6時間で、ホタテガイの腎臓など主要臓器だけでなく、えらや筋肉など全身に行き渡ったという。次に、約10倍の大きさの250ナノメートルのマイクロプラスチックで実験したところ、こちらもわずか6時間で吸収したけど、全身には行き渡らず、内臓だけに蓄積したという。つまり、同じ素材のマイクロプラスチックでも、その粒子が細かくなればなるほど、筋肉など内臓以外にも蓄積されるということだ。

そして、マイクロプラスチックを含まない海水にこれらのホタテガイを戻すと、24ナノメートルのマイクロプラスチックが14日間ですべて排出されたのに対して、250ナノメートルのマイクロプラスチックは48日後も残っていたという。つまり、小さな粒子のほうが排出されやすく、粒子が大きくなるとなかなか排出されなくなる、ということだ。ま、どちらにしても、6時間で吸収したマイクロプラスチックをすべて排出するのに早くても14日間も掛かるのなら、マイクロプラスチックを含有した貝類は、ほぼそのままの状態で食卓に上っていることになる。

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