プーチンに握られた「不都合な真実」。米バイデンの対ロ姿勢が軟化したウラ側

 

それに加えて「アメリカ政府はプーチン大統領の体制転覆を意図しない」とまでわざわざ公言したのは、ここにきてどうしたのだろうかと勘繰りたくなります。

武器弾薬の追跡が不可能であるという不都合な真実に加えて、どうも武器供与およびウクライナでのビジネスに関して、とても不都合な真実をロシア側に握られ、ここにきて突き付けられているという情報も漏れてきています。偽情報による情報戦かもしれませんが、嘘と単純に片づけることもできないように思います。

そして今回のロシアとウクライナの戦争をめぐって忘れてはいけないステークホルダーがトルコです。

トルコの思惑については先週号でも触れましたが、仲介役を買って出ている裏で、世界でも有数の軍事大国であるトルコとトルコ企業がロシアとウクライナ双方に“同じ”武器を供与している(実際には売っている)ことをどれほどご存じでしょうか?

ちょっと国際情勢の裏側を深く覗き込みすぎて少し嫌になりますが。

一般市民に多くの犠牲者が出て、人間がもつ残虐さを目の当たりにする裏で、ものをいうのはやはりお金の流れのようです。

そしてお金の流れと言えば、今回のロシアによるウクライナ侵攻に際してロシアに課された“重い”経済・金融制裁でしょう。

国際的な決済システムのSWIFTからの排除や、石油の禁輸などはそれなりに影響があるようですが、欧米および日本のニュースで再三「そのうち破綻する」と言われているロシア経済には、2月24日以降100日を過ぎても、エネルギー関連で実に930億ユーロ(約13兆円)がロシアに流れており、そのうちの60%にあたる570億ユーロ相当が欧州各国からの支払いであったと言われています。

そしてその流れに拍車をかけているのが、今回の案件で中立の立場を貫くインドです。

インドはロシアとの良好な関係を維持することで、地域のライバル中国とのパワーバランスを取る方針を貫いており、同時に欧米諸国ともつかず離れずの立ち位置を維持することで、独自の外交力を発揮しています。

中でもインドがロシア産の石油・天然ガス・石炭の中継地の役割を果たしており、ロシア産の資源が、実はインドを経由して欧米各国に流れているという、なんとも皮肉な国際経済の実情を表しています。

それゆえにアメリカ政府も欧州各国もインドにアプローチして、対ロ制裁網に加わってほしいと要請していますが、インド政府は聞く耳を持っていません。

インドのモディ首相の側近とカジュアルに話したところ、「どうして、こんな素敵な立ち位置をわざわざ放棄するんだい?アメリカも欧州も口ではあれこれ言うけど、別にインド人の生活を見てくれるわけではないし、中国から守ってくれるわけでもない。それにいつも欧米諸国は上から命令調でいろいろと言ってくるけど、それは本当に気に食わない。ロシアから安価で天然資源が手に入り、各国がそれを、先を争うように買いあさる。その真ん中にインドがいるという構図が確立しているのに、どうしてそれをわざわざ手放すんだい?この図式が成り立つ限り、他国は皆、インドの発言を深刻に受け止めるし、中国とのカウンターバランスも確立してくれる。これが戦略なんじゃないのか?」と言われ、思わず「なるほど…」とうなってしまいました。余談ですが。

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