プーチンに握られた「不都合な真実」。米バイデンの対ロ姿勢が軟化したウラ側

 

とはいえ、もちろんそんな涎がでるほどすごい装備が放置されていて黙っている人ばかりではないわけですから、かなり頻繁にそれらの高性能な武器が忽然と姿を消すそうです。

東部2州およびマリウポリなどを掌握したロシア軍が接収したという情報も流れており、それらも正しいと思うのですが、実際にはどこかに横流しされている可能性は否めません。もしかしたら、その行き先がロシア軍かもしれません。

そのことに気づきだした欧米の首脳たちは、最近になって、対ロシア・対ウクライナの態度を絶妙に変えてきています。

各国の政治日程が終わったこともありますが、各国国民のウクライナ離れと戦争疲れに対応すべく、転換が可能な国々(独仏伊など)は、じわじわとハードライナーから、和平交渉のお膳立てをするというソフトライナーに移行しつつあり、そしてそのトレンドに沿って、ウクライナに対する武器供与も控えるかスピードダウンさせています。そうすることで、プーチン大統領とロシアとの対話のチャンネルを再開しようとしていますし、同時に緊張関係を緩和することで、欧州のエネルギー危機への懸念を緩めようとする狙いが見え隠れします。

これまでのところ、プーチン大統領からの回答はネガティブで、今週に入ってドイツ向けの天然ガスパイプライン経由の供給を4割に絞り、揺さぶりをかけています。それもショルツ首相がキーフを訪れるタイミングで。

ドイツはメルケル首相時代に周囲からの懸念をよそに、ロシアへのエネルギー依存度を高めましたことで、今回のケースに対して何らかの責任が指摘され始めましたし、フランスのマクロン大統領については、“プーチン大統領との特別な関係”を強調することで国内外の支持を集めてきた経緯があります。そして一見、関係なさそうなドラギ伊首相も、欧州中央銀行総裁時代には、ロシア政府および富豪たちによる欧州各国への投資を後押しし、欧州のロシア依存を高めた一因を担っています。

つまり、今回の3首脳によるサミット旅行は、これらの過去のネガティブな情報を少しでも打ち消すためのフェイントとも認識できます。

ロシアからの直接的な安全保障上の脅威に曝されるポーランドやバルト三国については、最もハードライナーな姿勢を貫くしかありませんので、独仏伊のような“芸当”をすることはできませんが、これらの国々の対ロハードライナー姿勢は、もしかしたら“武器マーケット”への関与を覆い隠すための隠れ蓑という噂もでていることをお伝えします。

英国・ジョンソン首相については、独仏伊とは違い、まだ内政問題が山積みで、今、ソフトライナーに転じる余裕はなく、あくまでもロシアに厳しい姿勢で臨み、ロシアへの批判を強めることで、自らに向かう国民からの非難の矛先をかわそうとしているのが見え見えです。

ではアメリカはどうでしょうか?

表面的には、欧州各国に比べ、ウクライナへの支援に前のめりになり、供与額も量も群を抜いています。しかし、それはあくまでも表面的なことで、とても前のめりになり“プーチン憎し”となっている議会が次々と対ウクライナ支援をアップグレードしていくのに対し、実際に戦場に投入される武器はまだまだ少ないようです。

そして以前にも触れましたが、バイデン政権が長射程のハイマースを提供することを表明した際につけられた“条件”(ロシア領内に対して使用しないこと)を見ても想像できるように、ここにきてあまりプーチン大統領をこれ以上苛立たせないことを意図しているように思われます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月¥0で読む

 

print
いま読まれてます

  • プーチンに握られた「不都合な真実」。米バイデンの対ロ姿勢が軟化したウラ側
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け