プーチンのハッタリ「経済制裁は効いていない」は大嘘。ロシアに待ち受ける地獄

Warsaw, Poland, 25 of February 2022, Demonstration of Ukrainians and Poles in front of the Embassy of Russian Ferderation. Pictures of Putin on cardboard sheets prepared to be trampled on by people
 

ロシア経済の長期的打撃は壊滅的

たとえば自動車。ウクライナ侵攻後、欧米日の自動車メーカーは、ロシアへの輸出、現地生産を止めました。ロシア人は、日本車、ドイツ車が大好きです。しかし、在庫が切れれば、買えなくなる。

ロシアにも、自動車メーカーはあります。AvtoVAZ、GAZ.、KAMAZ.、UAZなどうです。ところが、これらのメーカーは、欧米日からの輸入部品を使っている。それで、「ハイテク車」は作れなくなります。

具体的に。たとえば、欧州の排ガス基準は2014年から「ユーロ6」になっています。しかし、ロシアの自動車メーカーは、単独でユーロ6の車を作ることができない。ロシアメーカーが生産する車は、「ユーロ2レベルだ」といいます。

「ユーロ2」というのは、1996年の基準。つまりロシア車は、「26年前のレベル」まで落ちてしまう。「ロシアに行くと、排ガスくさいな!」となるでしょう。しかも、ロシア車には、「エアバック」がつかないそうです。

以前にもお話しました。私の友人は、スズキの車に乗っています。故障したので、修理しようとしたら、「部品が入ってこないから無理です」と断られたそうです。友人は、悩んでいます。

次に航空機のことを考えてみましょう。ロシアでつかわれているのは、主にボーイングとエアバスです。そのうち半分ぐらいががリース。ウクライナ侵攻が始まると、リース会社はロシアに、「航空機の返還」を求めました。

ところがロシア政府は、「航空機を返却せず、そのまま使ってもいいよ」としたのです。「乗りものニュース」3月12日を見てみましょう。

2022年3月、日本や欧州各国のリース会社が所有し、アエロフロート並びにS7航空などロシアの航空会社が借り受けていた旅客機515機が、ロシア政府によって接収される見込みとなっています。

推定価値1兆円以上にも及ぶ前代未聞の「旅客機の盗難」という事態に直面し、航空業界は大きな岐路に立たされています。

ロシア政府は、「航空機を盗んでもいいよ」と。マフィアですね。しかし、盗むことはできても、その後どうするのでしょう?整備は?部品の交換は?しばらくすれば、盗んだ515機の航空機に乗るのは危険になってくるでしょう。私の友人の「スズキ車」同様、使えなくなるのです。

次に、鉄道を見てみましょう。モスクワとサンクトペテルブルグを結ぶ高速鉄道サプサンがあります。時速250キロで走る(新幹線は320キロ)。「ロシアの技術もそこまで向上したか…」ではないんです。

これ、ドイツのシーメンス製なのです。そして、シーメンスは、ロシアから撤退した。じゃあ、サプサンの整備、部品交換どうするのでしょう?自動車、航空機と同じで、できなくなるのです。

おわかりでしょうか?現状、ロシア制裁の目に見える影響は、「インフレだけ」です。しかし、長期的に見ると、基幹インフラまで影響がでてきます。だから、欧米日の制裁を「地獄の制裁」と呼ぶのです。

私は、ウクライナ侵攻がはじまる前から、「ロシアは、ウクライナとの戦争に勝つかもしれないし、負けるかもしれない。ウクライナとの戦争に勝ったとしても、地獄の制裁はつづくので、【 戦略的敗北は不可避 】だ」といいつづけてきました。その考えに変更はありません。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年6月18日号より一部抜粋)

image by: CinemaPhoto / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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