なぜ、月1万円で暮らすバリ島の人たちは「幸せ」でいられるのか?

Growth of food sales or growth of market basket or consumer price index concept. Shopping basket with foods with coin stacks on yellow background. 3d illustration
 

「価値」の考え方とチェック法

一方で考えなきゃいけない話があります。日本って、水をめちゃくちゃ輸入している国だって知っています?

日本はいろいろな資源を外に頼っているけど、水だけは内側で回っているから、「日本は水と安全は蛇口をひねれば出るものだと思っている」と言われるくらいです。それに比べて海外は、人口がどんどん増えていっているので、「石油以上に水のほうが資源として貴重になってくるのではないか、枯渇するのではないか」と言われています。

では、なぜ日本が水の輸入大国かと言うと、「バーチャルウォーター問題」というのがあるのですね。日本は、水そのものを輸入していません。ですが国産牛を育てる時に、牛たちが食べている飼料(エサ)はトウモロコシだったりするので、オーストラリアやアメリカから輸入しているのですよ。トウモロコシを育てるためには、当然大量の水を使います。なので、「バーチャルウォーター(仮想水)」というのですが、日本は間接的に海外の水を大量に使っているわけです。

トウモロコシや大豆、小麦もそうですし、そもそも牛肉とか豚肉を輸入しているということは、牛や豚も海外で同じように水を飲むし、その水で育てる飼料を食べているので間接的に消費しています。日本は年間で約600億m3の水を使っていますが、それとだいたい同量の640億m3の水を輸入していることになるのですよ。

今、僕たちは水の値段が上がっていくことに鈍感です。だけど石油の問題と同じで、水が枯渇してくると、間接的なバーチャルウォーターの値段も上がっていきます。すると結果的にトウモロコシの値段が上がって、飼料の値段も上がるから、国産牛の値段も上がらざるを得ないのです。

こういうふうに、僕たちは間接的にいろいろなモノの価値の上昇に引きずられて、価値が構成されています。ですので、「石油のように直接的にコストが上がってしまった時に、自分たちが勤めている会社や営んでいる仕事がどれくらい影響を与えるのか?」「バーチャルウォーターのように間接的に使われている資源の値段が上がった時に、僕たちの価値がどれくらい振り回されるのか?」。そこを一度見ておいたほうがよいのですね。

逆に言えば、バリ型の農業や牧畜をしている人は、自分たちの環境の中の水と飼料を使って育んでいるので、周りの価値に振り回されなくてよいわけです。こういう、直接的な物々交換の中で生まれてくる価値の比率が高ければ高いほど、外がインフレになろうが物価が上がろうが、関係ありません。

現状の日本のビジネスが、そういったものに依存しているとすると、ここ1-2年はかなりいろいろなかたちで振り回されるようになります。ですが、“自分の価値の源泉”がどこからきているのかを一度認識しておくことで、自分のビジネスの価値の減少が強制的に起こってしまうのかどうかがわかるというお話でした。

というわけで

今は学校の授業で、「SDGsとESGについて、必ず教えてください」みたいな話があります。実は初等教育のほうが、今の時代に合った価値の考え方を教えているのですよね。お子さまがいらっしゃる方とかは、これを機会に“自分の価値の源泉”について、つながりの中で生まれる価値が、どの段階で外の価値の上昇に巻き込まれてしまうのかを考えていただければと思います。

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ということで、つながる時代の未来を楽しみましょう。いろいろな歪みがガーっと出てくる1年なので、先回り、先回りが大事です。じゃあね!

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IT批評家、藤原投資顧問 書生 1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。 マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタート。 NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を経て、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業立ち上げに従事。 経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。 現職は14職目。シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリスト。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。

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