アメリカが蒔いた“不信の種”。NATO東方拡大という致命的な失敗

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開戦から5ヶ月半を経てもなお激しい戦闘が続くウクライナ紛争ですが、その責任はロシアのみに求められるものではないようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、「NATOの拡大は米国の致命的な政策の失敗」とするピューリッツァー賞受賞作家の超大作の内容等を紹介。さらに自国優越思想で結果的にロシアを追い詰めたアメリカの責任について考察しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年8月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

NATOの東方拡大は米政策の最も致命的な失敗/ティム・ワイナー『米露諜報秘録』を読む

本誌はウクライナ戦争勃発の当初から、ロシアの侵攻は突然でも一方的でもなく、短く見ても2014年のミンスク合意以降の8年間、長くとれば1989年マルタ会談での冷戦終結宣言とその後の米欧によるNATOの東方拡大から33年間にも及ぶ米露の駆け引きの結末であることを指摘してきた。

※ 本誌No.1145(3/28)「歴史の物差しの当て方で視点が変わる」、No.1148(4/11)「NATOはなぜ今もこの世に存在しているのか」など

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元NYタイムズ記者で国際関係に関する調査報道でピューリッツァー賞も得ているティム・ワイナーの近著『米露諜報秘録1945~2020/冷戦からプーチンの謀略まで』(白水社、22年7月刊)は、冷戦の始まりから終わりまでの米ソの政治戦・情報戦を、機密扱いを解かれた外交文書や当事者の回想など豊富な資料を駆使して描いている。その中でとりわけ印象的なのは、まさに「冷戦」による旧ソ連の「封じ込め」戦略の立案者であるジョージ・ケナン元モスクワ駐在大使が、冷戦後の1999年、NATOにポーランド、チェコ、ハンガリーが加盟し、さらにバルト3国やルーマニア、ブルガリアなど旧東欧諸国が雪崩を打って加盟しようとしているのを見て次のように語ったことである。

▼NATOの拡大は、冷戦期の全期間で最も致命的な米国の政策の失敗だろう。
▼こうした決断は、ロシアの世論の民族主義的、反西側的、軍国主義的傾向を煽り、ロシアの民主主義の発展に悪影響を及ぼし、東西関係に冷戦期の環境を復活させ、ロシアの外交政策を我々にとって決定的に好ましくない方向へ押しやることが予想される……。

ケナンは2005年に101歳で亡くなったが、今ウクライナを巡って起きているのは、まさに彼が予言した通りのことではないのだろうか。

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