アベスガ政治を評価?国民にケンカ売る内閣改造で支持率急落の岸田政権

2022.08.25
 

この時の厚労省のトップが加藤氏だった。そして、加藤氏について忘れられないのは、むしろこの後の対応だった。

「目安」が大きな批判を受けたことを受け、厚労省は3カ月後の2020年5月に「37.5度以上の発熱4日以上」の部分を改め、高熱などの症状があればすぐに相談、受診するよう勧めることにした。

記者会見でこのことを問われた加藤氏は、「目安」が受診の基準のように受け止められたことについて「我々からみれば誤解であり」と発言し、火に油を注いでしまったのだ。

日本感染症学会などの緊急声明は、まさに安倍政権のコロナ禍対応を、加藤氏の顔とともにまざまざと思い出させたわけだが、まさかその1週間後に、実際の内閣改造で「加藤厚労相」そのものが復活するとは、全く思ってもみなかった。

コロナ禍で行政が対応に失敗し、国民を守れなかった時、その理由を「国民の誤解」と言い放ち、責任を国民に転嫁したのが加藤氏だ。そういう人物を岸田首相は高く評価し、再び同じ役職につけた。

正直「国民にけんか売ってるのか?」という思いしかなかった。

加藤氏だけではない。今回の内閣改造では経済産業相に西村康稔氏が、デジタル相に河野太郎氏が起用された。今回はコロナ禍関連を直接担当するわけではないが、この2人も加藤氏と並んで、安倍・菅政権でのコロナ対応で中核にいた人物だ。

西村氏と言えば、菅政権時代の「飲食店狙い撃ち」を思い出す。度重なる感染拡大の波に対応しきれなくなっていた菅政権は、ただ漫然と緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出したり引っ込めたりを繰り返しては、そのたびに飲食店に対し、時短営業や酒類の提供停止などを求め続けていた。

行政の手によって「店舗の営業」という私権が制限されるのに、それに対する行政の支援(本来は「補償」であるべきだ)は十分ではない。頑張りきれず、協力したくても要請に従えない店が出てくる。

そんな飲食店に対し、西村氏は記者会見で、飲食店に影響力を持つ金融機関や、取引先の酒類販売業者を使って、酒類提供停止の「働きかけ」をさせる考えを示した。さらにメディアに対し、要請を守らない飲食店の広告を扱う際に「要請の遵守状況に留意してもらうよう依頼」することにまで言及した。

これには驚かされた。そもそも「飲食店の酒類提供禁止」が感染拡大防止にどうしても必要なら、行政が誠意を持って店側に呼びかけ、店側が被る不利益にも誠実に対処すべきだろう。それをよりによって、自らは手を汚さずに(あえて言う)、国民に相互監視させるようなことをやる。

これではまるで戦時中の隣組ではないか。

そして河野氏と言えばワクチンである。行政改革担当相として全国民へのワクチン接種を担当した河野氏だが、混乱に混乱を極めたのは記憶に新しい。何より「スピード感」を重視するあまり、高齢者や基礎疾患を持つ人など政府自身が定めた優先接種の枠組みが壊れ、結果として若い世代が高齢者より先に接種するケースが出るなど、結果として社会的弱者が取り残される状況を生んだことは看過できない。自らの「やってる感」を演出し「きちんと行政を回す」地道な力が足りなかったとしか言いようがない。

要するに岸田首相は、今回の内閣・党人事によって、こういう政治のありよう、つまり安倍・菅政治の負の部分を是認し、高く評価していることを示したわけだ。

print
いま読まれてます

  • アベスガ政治を評価?国民にケンカ売る内閣改造で支持率急落の岸田政権
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け