実用化がきわめて怪しい「次世代原発」を岸田首相にぶち上げさせてまで経産省が原発にこだわる背景には、再生可能エネルギーに対する財界のネガティブな見方がある。以下はエネルギー基本計画に関する有識者会議で財界メンバーから出た意見だ。
「石油や石炭など化石燃料は将来的に枯渇する恐れがある。再生エネだけで代替することはできない」
「日本の再エネ技術は中国などに太刀打ちできない。むしろ原子力の技術をどうやって維持するかが大切だ」
将来性のある再エネ技術については早々と白旗を掲げ、いまや古い技術というほかない原子力発電の優位性にいつまでも依存したいというのだ。
地球温暖化防止のために、CO2を出さない原発が必要という論法も相変わらず幅を利かせているが、再生可能エネルギーが普及期に入った今では通用しなくなっている。
こんな発想が財界トップの間で罷り通る限り、この国の発展の芽は抑えられるばかりだ。
ウクライナの現状に視線を戻そう。ロシアがザボリージャ原発を占拠し軍事拠点にしたことから、原発が砲撃に見舞われた。その事実が示すのは、原発は国内に自ら仕掛けた核爆発装置にもなるということだ。日本列島にめぐらされた50基をこえる原発は、いったん戦争が起きると、いつ巻き込まれないとも限らない。
ロシアや中国などの脅威に対して、日本の軍事力強化を声高に叫ぶ人々が、えてして原発推進派であることは、きわめて奇妙なことである。
安全保障のうえでも、脱原発が必要なことは自明だ。国は、原発に費やす資金があるのなら、再エネの新技術開発に投じるべきである。
自然エネルギーは無尽蔵で、膨大にある。地産地消も可能だ。むろん、温室効果ガスも放射能も出さない。再エネでは中国に勝てないから原発が大事という“原子力ムラ”のお粗末な理屈は一刻も早くこの国から一掃すべきであろう。
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