「核爆発」装置を自ら仕掛ける日本の愚。軍事力強化以前に再考すべき問題点

 

いつまでも放射能を出し続ける使用済み核燃料。その処分方法はいまだに確立されていない。いずれ、科学技術の力で克服できると踏んで、とりあえずスタートさせたものの、最終的に地中深く埋めておく処分場が、候補地住民の反対でいっこうに見つからず、使用済み核燃料は各原子力発電所のプールに貯まり続けている。

その解決策である「核燃料サイクル」は、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まったことで、頓挫した。使用済み核燃料の行き場がなくなれば、いずれ、原発の運転を止めざるを得ない。

そもそも、石油や原子力などを使った大規模発電所による集中的な電力システムは環境、コスト、安全保障、持続可能性からいっても、もはや古い仕組みになってしまっている。

だが、原発がいぜん巨大産業であることには変わりはない。原発があれば、電力会社、原子炉メーカー、ゼネコン、それらをめぐるあまたの取引企業が儲かる。国民からの電気料金を源泉とする豊富な資金は、広告料、研究開発費、政治資金としてマスコミ、学者、政治家に流れ、天下りルートの確保に余念のない経産省官僚とともに“原子力ムラ”と呼ばれる利益共同体を形成してきた。

その構図から生み出されたのが、「次世代原発(次世代革新炉)」という名の新たな幻想である。

「次世代原発」とは何か。既存原発の次の世代というと、国際的な理解では、使用済核燃料を排出しない「第四世代原発」になる。しかし、「第四世代原発」はまだ研究段階であり、21世紀中の実用化は困難とされている。

ゆえに、いまの時点で言う「次世代原発」は、小型原子炉(SMR)や高速炉などを指すと考えるのが妥当だが、それなら大いに疑問がある。

高速炉は「もんじゅ」の廃炉で実現が不可能に近いことがわかったにもかかわらず、「核燃料サイクル」神話を生かし続けるため研究・開発中の看板を下ろしていないだけである。

米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資する米テラパワーと米エネルギー省の高速炉開発計画に、日本の原子力機構などが参加することになっているが、ナトリウム漏れの事故を起こした「もんじゅ」のデータが頼りというから、これも甚だ心許ない。

小型原発についてはいくつもの取り組みがある。英ロールス・ロイスの小型加圧水型軽水炉、カナダのテレストリアル・エナジーの「溶融塩炉」などだ。

既存の大型原発と違い、工場で製造したモジュールを現地で組み立てる建設方法が可能らしいが、出力が30万キロワット程度しかなく、まだどこも事業化したことのない技術である。理論的には成り立っても、実際に建設し運転していない現段階で、経済合理性があるかどうかもわからない。

このほか「革新軽水炉」というのがあるが、これは既存原発の域を出ないので「次世代原発」とはいえないだろう。

いずれにせよ核のゴミの問題が解決できない以上、原発に将来があるとは思えない。

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