3.ゼロエミッションとファッション
「ゼロエミッション」とは、エミッション(排出)をゼロにすること。特に世界は2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを目指している。
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は石油が原料であり、採掘、運搬でも二酸化炭素を排出するし、製造工程や最終処理を考えても環境負荷は高い。
コットンは、通常の栽培では大量の合成肥料や合成農薬を使用するため、環境負荷は高い。しかし、無農薬の有機栽培であれば、環境負荷は低くなる。また、綿製品そのものは生分解するので、廃棄に関しては環境負荷は低い。
パルプやコットンリンターが原料のレーヨン、ビスコース等のセルロース系繊維は製造工程において環境負荷は少ないとされている。また、生分解し、焼却しても有毒ガスは発生しない。
合成繊維も天然繊維も染色には合成染料を使用するし、大量の水を消費する。その意味では、昇華転写等のデジタルプリントは水を使わないので、排水処理も必要ないので環境に優しいといえる。
ウールは羊の毛なので、環境負荷は低い。羊は草を食べ、羊の糞は草の栄養になり、循環している。カウチンセーターのように、羊の毛の色をそのまま使えば、染色による環境負荷もなくなる。
しかし、ビーガン(完全菜食主義者)や動物愛護団体等は、ウールに対して否定的である。
環境保護という意味では、麻が有望だ。麻の栽培は土壌改良にもつながるし、肥料も農薬もほとんど必要ない。
リサイクル、古着もゴミを減らし、資源の節約につながるので、環境に優しい。
次から次へと流行を生み出し、大量生産で大量の資源を消費し、大量廃棄で環境負荷を与えている現在のファッションは環境負荷が高い。価格や機能性だけでない環境性能という基準が必要になると思う。
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