なぜ、プロパンガス利用者には、そんなデメリットばかりが付いて回るのでしょうか。ここでいくつかのプロパンガス料金が高くなる理由を見ておきましょう。
- もともとプロパンガスは、従来の都市ガス料金のような公共料金(国から許可を受けた総括原価方式だった)とは違って自由料金制だったため、事業者同士の暗黙の談合で価格が高止まりしていた
- 都市ガスの主原料はLNG(液化天然ガス)で供給が幅広く、都市ガス会社は自社タンカーで買い付けて製造・販売を行うものの、プロパンガス業者は供給も限定的で、原油価格に連動し、元売りと卸売り、小売りの3段階もあるため高くなりがち
- プロパンガスはボンベに充填し、人がトラックに載せて1本ずつ運ぶので人件費がかかるため、小売価格の半分近くが小売りのコストに反映される──といわれます
- アパートなどの賃貸住宅の場合、プロパンガスの設備導入時のコストを、後々の入居者のガス料金に転嫁されている事例が多い
この最後の理由はどういうことかといえば、アパートなどの大家さんは、新築時にプロパンガス業者と契約を結ぶだけで、ガス導配管費用、各室の給湯器費用(近年はエアコン代、インターホン代、Wi-Fi代などもある)をタダにすることができるからなのです。
たとえばアパートの戸数が10~20室あると、大家さんは1室当たり、追い炊き機能付き給湯器代だけでも、20万円から25万円前後の初期の設備費用がかかります。
アパートの戸数が10室なら200万円から250万円にもなり、戸数が20室なら400万円から500万円にもなるのです。
さらに、エアコン設置やインターホン、Wi-Fiなどを装備すれば、追加で15万円~20万円がかかるのです。
ゆえにそのぶんをプロパンガス業者に肩代わりしてもらえればアパートの建築費用は安くなります。
プロパンガス業者にとっては、新築アパートはプロパンガスの新規契約に食い込むにあたっての絶好のチャンスというわけなのです。
要するに、プロパンガス業者は、それらの費用をその後のアパート入居者からのガス料金で回収する仕組みになっているのです。
そのため、必然的にアパートなどの入居者のプロパンガス料金は高くならざるをえない構造があるわけです(大家さんとプロパンガス業者との間には、10年~15年の業者変更不可の契約の縛りがあり、途中で業者を変えると大家さんは違約金を取られます)。
つまり、プロパンガス利用のアパート入居者は、大家さんのアパート建築(設備)費用の一部を 肩代わりさせられているわけです。
ただでさえ高額のプロパンガス代に、さらに上乗せされた設備費用までを上乗せで払わされている──という構図ゆえに、プロパンガス利用のアパート居住者は、大損させられているというわけなのです。
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