焦るな。後期高齢者の一部が「医療費2割負担」も過度の心配は無用なワケ

2022.10.01
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この10月から変更される、後期高齢者の医療費窓口負担割合。これまで1割だった負担が条件により2割にアップすることになるのですが、正しい「負担増の条件」をご存知でしょうか。今回、後期高齢者の医療費見直しについて詳しく解説してくださるのは、ファイナンシャルプランナーで『老後資金は貯めるな!』などの著書でも知られ、NEO企画代表として数々のベストセラーを手掛ける長尾義弘さん。長尾さんは記事中、2割負担となる条件や負担額が大きくならないよう設けられた経過措置を詳しく紹介するとともに、医療保険加入が必要か否かについても具体的な数字を上げつつ考察しています。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

「後期高齢者の一部は医療費が2割負担になる」に慌てないで!

2022年10月から75歳以上の高齢者で一定の所得のある人は、病院の窓口で支払う保険料が1割負担から、2割負担に変わります。

「また、高齢者の負担が増えるのか!」「値上げラッシュが続くなかで弱いものいじめだ」「高齢者の生活が厳しくなる!」などの批判がネットなどのなかで上がっているように思います。正しく制度を理解しないで不安だけを煽るような記事もあるように感じました。

たしかに75歳以上の高齢者の負担が増えるのですが、すべて上がるのではありませんし、2025年までは経過措置として月額の上限もあります。

今回は、後期高齢者の医療費の見直し内容というのは、どういうものなのかを確認していきましょう。

団塊の世代が75歳になってきた

新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻といった世界の混乱が物価を押し上げています。さらに日本は円安が物価高を押し上げています。こんな値上げラッシュのときに、75歳の保険料の自己負担を1割から2割に引き上げなければいけないのか?ということからお話ししましょう。

「団塊の世代」というのは、人口のなかでもっとも大きいボリュームゾーンになっています。この団塊の世代の人口が600万人で総人口の4.7%を占めています(日本人の20人に1人)。その団塊の世代の先頭が75歳になりはじめました。

そもそも後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人は全員が入る医療保険です。75歳未満の人たちの場合は、自営業者などは国民健康保険だったり、会社員なら全国健康保険協会(協会けんぽ)や、会社の健康保険組合に加入しています。

後期高齢者の場合には、医療費は原則1割負担で、現役なみの所得の人は3割負担です。

現役世代の負担を減らすという目的

今回の改正は、高齢者だけに負担を押し付けているのか?という議論になると、そうでもないと考えています。

まず一世帯あたりの金融資産でいうと30代は平均529万円に対して、70歳以上は1,314万円です。高齢者の方が貯蓄はあります。

若年層の実質賃金は上がっていなくて、非正規雇用の増加で苦しい生活をしている人も多いのです。

後期高齢者医療制度の医療費の財源というのは、高齢者自身の保険料が10%、国や地方自治体の税金が50%、残りの40%の負担は74歳以下の保険料から支援金として負担することになっています。

2022年度の予算ベースを見ると総額18.4兆円のなかで、現役世代からの支援金が6.9兆円です。この支援金を払うための負担がどんどん増えているという状態です。

そのため高齢者でも保険料を支払える人には負担してもらうというのが、今回の改正の目的です。それわすなわち現役世代の負担も減らすということに繋がります。

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