焦るな。後期高齢者の一部が「医療費2割負担」も過度の心配は無用なワケ

2022.10.01
 

後期高齢者の約20%の人は負担増になる

では具体的にどんな人が、2割負担になるのかというと、下記の所得に該当した人です。

課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上の方は、窓口負担割合が2割となります。

これは後期高齢者全体の約20%の人が該当します。つまり75歳以上の人が全員負担増になるわけではありません。

また、急に2割負担になって、自己負担額が大きくならないように経過措置というのがあります。

2022年10月1日から2025年9月30日までの間は2割負担となる方について、1か月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う負担増加額を3,000円までに抑えます(入院の医療費は対象外)。

たとえば外来で1月3,000円以上の医療費を支払った場合には、窓口の請求では支払う必要がなくなります。また支払った場合には後ほど払い戻してくれるということです。

高額療養費制度についてもそのままです。

では今回の2割負担になると、どのくらい負担が増えるのでしょうか。厚生労働省の試算では、自己負担額の増加分は、平均で年間2万6,000円になる見込みです。2万6,000円の負担増というのは、たしかに家計にとっては痛いと思いますが、節約をすることでなんとか補える金額ではないでしょうか。

現役世代の負担を考えれば、いたしかたないように思います。

医療費の負担額が増えるといって医療保険は必要なのか?

医療費が2割負担になるから、といって医療保険に急いで入らなければということもありません。

だって考えてみてください。平均で2~3万円の自己負担の増額です。医療保険の場合、高齢者の保険料は高いです。医療保険の保険料負担額と治療費の負担額を比較してみてください。

でも、「70歳で保険料は4,000円くらいで入れる医療保険もあるのでは?」という意見もあります。

ちょっと計算してください。70歳で保険料が4,000円という医療保険は終身払いの終身保険だと思います。95歳まで生きていたとします。その保険料の総額は120万円です(4,000円×12ヶ月×25年=120万円)。保険料の総額と受け取れる給付金の額を考えれば割に合わないのがわかります。

2割負担に該当するからといって、過度の不安にならないようにしてください。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

image by: Princess_Anmitsu / Shutterstock.com

長尾 義弘

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