京大教授が「消費税減税を検討しない」岸田首相を徹底批判する理由

shutterstock_2062707176
 

エネルギー価格や原材料費の高騰に30年ぶりの円安が拍車をかけ、賃金上昇を伴わない物価上昇が一般の国民を苦しめています。この状況下において「消費税減税を検討しない」と言明した岸田首相に対し“愚か者”か“邪悪な人間”との烙印を押すのは、京都大学大学院教授の藤井聡さんです。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』で藤井さんは、今ほど「消費税減税」が効果を発揮するタイミングはなく、しかも日本は消費税減税のデメリットを気にする必要のない世界で唯一の国であると、“愚者”にもわかりやすく解説しています。

この記事の著者・藤井聡さんのメルマガ

購読はこちら

物価高なのに賃金下落の今ほど「消費税減税」が求められる状況はない。これで減税を考えないのは愚者か悪人かのいずれか

岸田氏は「消費税減税を検討しない」と言明しましたが、これほど驚くべき事態はありません。今ほど消費税減税が求められる経済状況等滅多になく、したがって普通の国の普通のリーダーなら消費減税を行うにきまっているからです。というか実際、アメリカをはじめとした実に多くの国々が消費税(というか、付加価値税)やガソリン税の減税・凍結を行っています。

したがって、その言葉が本気なのだとしたら、我が国総理はホントに何も分かっていない愚か者か、もしもそうでないとするなら国民の利益の事等なにも考えない相当邪悪なワルイ人物だ、という事になってしまいます。

我が国リーダーですからもちろん、そうでないことを祈念していますが……なぜそこまで言えるのかについて、ここでは解説したいと思います。

まず、物価高対策において消費税減税ほど効果的なことはありません。今、消費税を凍結すれば、その瞬間に全ての商品の価格が10%の消費税分引き下がる事になるからです(厳密に言えば、理論的には11分の10の水準に、9.1%引き下がります)。

しかし、そうなれば、中長期的には、人々の消費が活性化されると同時に賃金が引き上がり、それらを通して、かえって物価高(つまりインフレ)の状況となってしまいます。つまり消費税減税は、短期的には物価を引き下げるものの、中長期的には物価を引き上げる方向に作用するのです。

で、もしも日本経済の基調がインフレであり、その上で輸入価格の高騰を受けてさらにインフレになっている、という(現状のアメリカやヨーロッパのような国々の)状況であるなら、消費税を引き下げることは、かえって、元々存在していたインフレ基調を「構造的に加速する」ことになり……下げたくても下げられない、という事になってしまいます。

つまり、そんな元々インフレ基調の国にとっては、消費税減税は、短期的にはメリットはあっても、中長期的にはより深刻なインフレをもたらすリスクがあるのであり、したがって、そういう国々では軽々に消費税減税を行うことができないし、やってしまっては、結果的にトータル、状況が悪くなってしまう(=インフレがさらに加速してします)……ということにもなりかねません。

だから例えばアメリカでは、(ガソリン税の凍結は行ったものの)消費税等の間接税の減税については必ずしも積極的ではないのです。

この記事の著者・藤井聡さんのメルマガ

購読はこちら

print
いま読まれてます

  • 京大教授が「消費税減税を検討しない」岸田首相を徹底批判する理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け