今後の見通し
ただ、共和党が下院で多数派を奪還することは間違いなく、バイデン大統領の政権運営は不透明だ。
第一に、大統領と民主党は、通したい法案を成立させることが難しくなる。第二に、民主党主導により進められてきた、トランプ氏の召喚を決めた議事堂襲撃事件を調査する特別委員会は、解散する見通し(*5)。
他方、共和党はバイデン大統領の次男であるハンター氏のウクライナや中国などとのビジネスにまつわる疑惑について、下院で追及する構えだ(*6)。
さらに「中国に関する特別調査委員会」の設置により、議会がバイデン大統領に、中国にさらに強硬に出るように求めている。一方、ウクライナ支援の縮小は、すぐにはみられないとも(*7)。
ニューヨーク・タイムズは、
「共和党が期待したような展開にはなっていない」
「共和党の赤い波が起きる兆候はみえない」
と報じた(*8)。
激しいインフレ批判にさらされながらも、バイデン大統領が支援に力を入れた民主党硬派がトランプ派の候補を破ったところもあり、バイデン氏自身の評価も高まる可能性も。
一方、“メディア王”は傘下のメディアを使い、トランプ批判 次期大統領にフロリダ州知事推しへ
対して、トランプ氏には逆風が吹き始めている。「メディア王」と称されるルパート・マードック氏傘下の複数のメディアが共和党の苦戦をめぐり、トランプ批判を始めた。
もともとマードック氏傘下のメディアとトランプ氏の関係は良好であったものの、しかし2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件と、その2週間後にトランプ氏が大統領を退任以降、関係が悪化(*9)。
対するトランプ氏も、マードック氏と彼が所有するニューズ・コーポレーション、さらに2024年の大統領選挙の共和党候補者指名争いで対抗馬になるとされるフロリダ州知事のデサンティス知事を批判した。
マードック氏が所有するメディアとしては、ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・ポスト紙などが該当。
ウォールストリート・ジャーナルは10日付の演説で、トランプ氏が政敵を揶揄するときに用いる「loser(敗者)」という単語を用い、トランプ氏を
「共和党最大の敗者」
と表現(*10)。ニューヨーク・ポストは、トランプ氏をイギリスの童謡『ハンプティ・ダンプティ』になぞられた風刺画を掲載し、
「(壁を建てられなかった)ボスは大転落-共和党の部下全員は党を元に戻せるか?」
とした。さらにニューヨーク・ポストはデサンティス氏が州知事選で圧勝し再選を果たしたことを一面で報じている。
■引用・参考文献
(*1)金子渡「バイデン民主 上院維持」西日本新聞 2022年11月15日付朝刊
(*2)金子渡 2022年11月15日
(*3)斎藤彰「米中間選挙は予想外の接戦か 有権者投票動向の最新分析」Wedge ONLINE 2022年7月17日
(*4)川島実佳「『レッドウェーブ』なぜ不発? 世論調査とメディアが作った中間選挙の虚構」NewsSphere 2022年11月15日
(*5)「バイデン氏、今後の政権運営への影響は… 米中間選挙 開票作業進む」日テレNEWS 2022年11月9日
(*6)日テレNEWS 2022年11月9日
(*7)日テレNEWS 2022年11月9日
(*8)日テレNEWS 2022年11月9日
(*9)Mark Niquette「マードック氏メディアがトランプ氏を一斉射撃-『共和党最大の敗者』」Bloomberg 2022年11月11日
(*10)Mark Niquette 2022年11月11日
(*11)Mark Niquette 2022年11月11日
(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年11月19日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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