年数を重ねるごとに、食堂のメニューも増えていき、和菓子屋でありながら、食堂メインのお店となっていったのです。
カレーライスや炒飯、かつ丼、焼肉定食、焼き魚定食、ラーメン、五目そばなど、他の食堂に負けないぐらいの品揃えとなっています。
その中の一番人気が、「肉野菜炒め定食」なのです。
町内会の人や地元のサラリーマンに喜ばれています。
他にも、奥さんが考案した「ツナハンバーグ定食」も注文が多く入ります。
後を継いで、65年。結婚もして、子どももでき、孫が遊びに来るように。
夫婦ふたりで忙しく動きまわっていますが、大変なこともありました。
13年ほど前、店主は、脊柱管狭窄症と股関節症の手術を受け、鍋を振れなくなったため、食堂の調理は奥さんと交代しました。
それでも、和菓子づくりは続け、接客担当として、いまも元気に働いています。
朝4時から、5、6時間掛けて、和菓子づくりと料理の下準備をひとりで行っています。
身体の衰えを感じながらも、できる限りは、お店を守っていくつもりです。
小学生の孫が、後を継ぐと言ってくれてはいるものの、現実問題としては、間に合わないかもしれません。
長年親しまれてきたお店が、店主の高齢化によって閉店になることは、ありふれた出来事だと言えます。
反面、常連さんたちは、できることなら残して欲しいと願うもの。
しかし、小さなお店はいずれ消え去るもの。
数十年の歴史は、店主が生きてきた証です。
同時に、お店を愛した人たちの想い出でもあります。
古ぼけたお店は、やがて更地になるかもしれません。それでも、いまはまだ生き続けています。
もうしばらくは、店主の喜び、そしてお客さまの癒しの場として、そこに存在して欲しいと思います。
image by: Shutterstock.com