「異次元」と言い切るほどの少子化対策をする前に岸田総理がすべきこと

News heading that says "declining birthrate" in Japanese
 

2.物価高でも給料が上がらない理由

株主利益と労働組合について考えていたら、次のような報告書が公開されていました。

「アメリカにおける労使関係法上の『使用者』概念と投資ファンドでの実態」で労働政策研究・研修機構によるものです。
これによると、

(1)投資ファンドはあくまで投資家であって、労働組合が交渉する相手は経営者であること。

(2)労働組合は労働者のレイオフや待遇に関しては団体交渉権を持っていること。

(3)投資ファンドは良好な労使関係を投資の条件として重視しており、労働争議が激しい企業には投資しないことが多いこと。

(4)労働組合の全国組織であるAFL-CIOは「親労働者性向上キャンペーン」を展開しているという事例紹介。これは労働者としてのストライキと共に、株主の立場として他の株主に対して賃金カット等は会社に大きな打撃を与えることを訴求して、CEOを罷免するキャンペーンを展開したというものです。しかし、この種のキャンペーンの効果については、確定していません。

この報告書を読んで感じたことは、まず日本企業には有効に機能する労働組合が存在せず、労働者保護の法的整備も遅れているのではないかということです。

つまり、投資ファンド云々以前に、そもそも非正規社員は組合にも所属できず、もちろんストライキを行うこともできない。つまり、団体交渉の手段を持たないということが大きな問題だと思います。

物価の上昇をすぐに賃金に反映できない要因は、正社員と派遣社員という階層構造にもあるでしょう。比較的恵まれている正社員は、非正規社員のために行動を起こすことはありません。そもそも正社員も労働者の権利に対する意識が低いと思われます。

経営者は、「本人たちが文句を言わないのだから、それほど急いで給料を上げる必要はない」と考えるでしょうし、多くの場合は、「会社も大変なんだから、一緒に頑張ろう」ということで乗り切ろうとするわけです。

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