米国でバイデン電撃辞任説が急浮上。1月中にもハリスが米国初の女性大統領に?

 

3つ目は、家族のスキャンダルです。具体的には、次男のハンター・バイデン氏に関して、議会下院の過半数を取った共和党が追及の構えを見せています。バイデン大統領の側は、ウクライナの経済発展に寄与するために次男が天然ガス企業の役員をしていたのは問題ないという立場で終始一貫しています。ですが、ネット上で行われているハンター氏への全人格攻撃のような話が、議会下院でも展開されるのは目に見えており、一家としては議会の追及には強い嫌悪感を持っていると思われます。

4つ目は、大統領本人の健康状態です。バイデン氏自身に関しては、80歳にしては非常に健康だと思いますが、この2年間の激務の疲労は相当にあると思います。また、更に残りの任期2年を完走しなくてはなりません。まして、現職でありながら予備選の挑戦を受けるということにでもなれば、ストレスは相当なことになると思われます。

という4つの理由については、一つ一つを見ていけば、それほど深刻なものではないかもしれません。ですが、この4つが積み上がる中での精神的、肉体的負荷というのは、相当なものがあると思われます。当初想定されていた3と4に加えて、一気に2と1が加わったということもあります。

バイデン氏というのは、俗に言うストレス耐性ということでは、恐らくアメリカの政治家の中ではトップレベルであるかと思われます。アメリカ史上ということでも、相当に上のランクに来るでしょう。ですが、それでも耐えきれない場合には、この稀代の政治家の老獪な現実主義と闘争心に枯渇が来るということもあり得ると思います。

バイデン大統領は、ここ半年くらいの間、2024年の出馬に向けての姿勢を問われると「家族に相談して決める」という言い方を繰り返していました。その前は「勿論、出る」だったので、その「後退ぶり」も顕著であったわけです。ですが、この「家族に相談」というのは主としてジル夫人と「自分の健康問題など」について、じっくり相談するという意味だと誰もが思っていました。そのジル夫人に健康問題が出たというのは、仮に完治しているにしても、この夫婦にとっては相当な負荷であったことが想像されます。

ここ数年、バイデン夫妻はカリブ海に浮かぶ米国領ヴァージン諸島の「セント・クロエ島」がお気に入りのようで、休暇の際には必ずここで休養するのが通例となっていました。カリブの陽光と、青い海に加えて、米国領ということの安心、英語圏である気安さ、そしてカトリックである夫妻にはこの地域への親しみには、格別の意味があるのかもしれません。

そこでの平穏な時間と、ワシントンに戻ってからの「機密文書スキャンダル」のストレス、そしてジル夫人の罹患という問題が重なる中で、この多忙を極めてきた80歳と71歳の夫婦が、リゾート地における平穏な時間が永遠に続くこと、つまりは「引退」という文字を強く意識した可能性はあると思います。

そんなわけで、あくまで予測に過ぎませんが、バイデン政権というものが今のような形で続く可能性は実は5割以下であり、出馬断念だけでなく、辞任という可能性も否定できないことをお話してきました。

そんな中での岸田訪米ですが、実は非常に良いタイミングであったと思います。冒頭、岸田外交の「緊張を高める方向性」には疑問を呈しましたが、その方向性の是非を一旦脇に置いて、今回の訪米そのものについては、周囲も含めて「グッドジョブ」であったと思います。3点、指摘しておきたいと思います。

まず1点目はこのタイミングです。1月21日を過ぎれば、ハリス禅譲という波乱の可能性が出てきます。そうでなくても、2月上旬には一般教書演説があり、バイデン続投の場合も、その直前は演説内容の調整で多忙になるでしょう。その意味で、今回はこのタイミングしかなく、その絶妙のタイミングで行ったことになります。

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