米国でバイデン電撃辞任説が急浮上。1月中にもハリスが米国初の女性大統領に?

 

もう1つの問題としては、2月初旬(7日の火曜日)には大統領一般教書演説が控えているという日程の問題があります。この演説は、非常に注目されます。ロシアのウクライナ侵攻後初、中国の新体制確定以降初、そして金融も財政も含めて政策的に非常に難しい舵取りの中での演説です。しかも下院は共和党が多数党で、演説会そのものも共和党のマッカーシー下院議長の議事進行で行われます。

バイデン氏に取っては大変なストレスです。反対に、ハリス氏に「禅譲」する場合に、仮に今回この1月中にバイデン氏が辞任して、ハリス氏が大統領になっていれば、彼女はこの演説を「デビューの場」とできるだけでなく、この任期中に一般教書演説が2回できます。仮にこのタイミングを逸すると、ハリス氏の「全米デビュー」はTV演説と記者会見だけになりますし、任期中の一般教書演説の回数は1回だけになります。

整理してみますと、ここまでお話した4つの可能性については、

(1)バイデン即時辞任、ハリス大統領昇格(40%)
(2)バイデン不出馬宣言、ハリス弱く予備選泥仕合(30%)
(3)バイデン続投宣言、予備選受けて立つ(20%)
(4)バイデン続投、党内結束を呼びかけ(10%)

ぐらいの確率になるのではと思います。(1)と(2)の順番は反対というのが常識的かもしれませんが、今後起きうることを考慮すると、「自分は出ないが4年は完走する」という判断よりは「即時辞任」のほうが合理的と考えられます。

さて、バイデンが「不出馬もしくは辞任」を取り沙汰されるに至った原因ですが、4点指摘しておきたいと思います。

1点目は、この間、連日のようにニュースのヘッドラインを賑わせている「機密文書の不法所持」問題です。「あってはいけない機密文書」がデラウェアの自宅等で発見されたというのですが、実態は軽微の問題のようで、ページ数としても数ページのものらしいです。また、最新の機密文書ではなく、オバマ政権の副大統領当時のものということになっています。

とにかく公平に見れば軽微な問題ですが、トランプの起こした大規模な問題と「全く同種の問題」だというのが厄介です。これでバイデン政権と民主党は、トランプの機密文書秘匿問題を批判できなくなりました。また、バカ正直な、あるいは自分の歴史的評価を気にするガーランド司法長官は、早々に「特別検察官」を指名し、しかも「公平原則」から司法省の序列通りに「共和党支持の法律家を指名」してしまいました。これで、問題は公に認知されたことになり、おそらくは大掛かりな捜査が進行すると思われます。

問題がこの時期に出てきたこと、それも自宅のガレージなど「極めてプライベートな空間」から見つかったなど、何とも不自然な話であり、それこそTVドラマのような展開としか言えません。ですが、バイデン自身は一切ダンマリを決め込んでいて、自己弁護もしていませんし、その沈黙は「ここまで来ると相当に深刻な問題だと思っている」というニュアンス、そして「自身の口から語る際には進退問題も言及するだろう」という雰囲気が濃厚になっています。

2つ目は、健康問題です。といっても、バイデン氏自身の問題ではなく、奥様のジル・バイデン氏の方です。彼女は大統領より9歳若い71歳で、極めて健康だったのですが、今回、皮膚がんに罹患していることが判明し、既に手術が成功していると発表されています。報道では、病状はそれほど深刻ではないということで、別段、何かを隠しているということはないと思います。

ですが、バイデン氏自身が高齢で健康不安を取り沙汰されている中で、夫を支える存在と思われている若いジル夫人の健康問題が出たということは、ある種の不安感を与えたのは事実です。

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