米国でバイデン電撃辞任説が急浮上。1月中にもハリスが米国初の女性大統領に?

 

問題は別のところにあります。それは、バイデンが「2024年は出ない」とした場合に、その宣言はイコール、民主党内の激しい予備選レースのスタートになるという問題です。というのは、そこでバイデンが「自分は2024年は出ないがハリス副大統領を後継指名する」と言った(その場合は、恐らく言うでしょうが)としても、党内がハリスでまとまる可能性は少ないからです。

何と言っても、現時点ではハリスは不人気です。それは彼女本人の資質というよりも、支持者や選対、副大統領府のスタッフなど周囲の問題が大きいようですが、それはともかく、彼女は副大統領になったことで、存在感も人気も全く伸びていません。

という中では、とても民主党内が「2024年はハリスで戦う」というような一本化はできず「ガチンコの予備選」になる可能性が高いわけです。例えば、ニューサム知事の場合は「バイデンが出るなら自分は出ない」と公言しているわけですが、これは「ハリスが相手なら堂々と自分は対決する」という宣言に他なりません。

その他にも、ハリスは人権派であるものの、経済は市場主義ですから、左派からは憎まれています。AOCなどが名乗りを上げて来る可能性は十分にあります。と、そこまでは容易に想像が可能なストーリーです。そこで、問題になるのは、例えばですが2024年の前半、2月とかあるいは4月とかの時点で、ハリス副大統領が予備選でボロボロになって敗退するという可能性です。

仮にハリスが予備選で負けると、ホワイトハウスは「辞める大統領と、党内抗争で敗北して辞める副大統領」のコンビということになります。これは非常に異例ですし、危険な状況になります。かといって、そこでハリスを辞任させる訳にも行きません。ハリスは2020年にバイデンとのコンビ(チケット)で巨大な民意の信任を得て副大統領に当選しているので、簡単に職を投げ出す訳には行かないのです。

例えばですが、最高裁のロバーツ長官が健康問題等で辞任したとして、その後任の「最高裁長官」にハリスを押し込む、その人事の一環としてハリスは副大統領を辞任して、副大統領職は過渡的な人物に引き渡すというようなストーリーはあるでしょう。ですが、そのぐらいしないと、現職の副大統領を「引きずり下ろす」というのは難しいし不自然だと思います。

それ以前の問題として、仮に予備選の序盤戦、それこそ各州の予備選が始まる前の2023年夏以降の「連続TV討論」だけの段階で、既にハリスの支持率が伸びないとか、その結果として選挙資金も枯渇するといった展開になる可能性もあります。そうなると、相当長期間にわたって政権が「レイムダック化した正副大統領」によって担われるという「憲政の危機」を呈してくる、そのような「Wレイムダック」になると民主党としては、2024年の大統領選も、上下両院選にも悪影響が避けられません。

ですから、このようにバイデンが「自分は2024年は出ない。後継にはハリスを推薦する」という宣言をする可能性は低いと思われます。確率としては30%程度ではないでしょうか。

そこで4番目の可能性が浮上します。それは、バイデンが大統領を辞任してハリスを即座に大統領に昇任させるという手段です。大胆不敵という感じもありますが、3番目の「自分は出ない、ハリスを推薦するが予備選惨敗」という「Wレイムダック」を確実に避ける方法としては、合理性はあります。

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