アベノミクスは大失敗。それでも安倍氏「唯一のレガシー」サハリン権益を日本が守れた理由

2023.01.23
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アベノミクスをはじめ、毀誉褒貶の激しい安倍晋三元首相の政治実績。プーチン氏を相手としたロシアとの外交交渉についても厳しい評価が散見されますが、まったく別の見方も存在しているようです。立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さんは今回、安倍氏の対露外交こそが「真のレガシー」としてそう判断する根拠を明示。さらに岸田首相に対しては、功を焦ることのない地道な外交の展開を提言しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

安倍外交「真のレガシー」はサハリン権益の維持。元外相の岸田首相はどこまで理解しているのか?

岸田文雄首相は、5月に広島で開催され、日本が議長国を務める先進7か国首脳会談(G7)を最大の見せ場と位置付けて、その準備のための「G7議長国外交」をスタートさせた。

岸田首相は、1月9日から15日の間、G7メンバー国であるフランス、イタリア、英国、カナダ、米国を歴訪し、各国首脳と会談した。ウクライナ情勢をはじめ、食料問題や核軍縮、気候変動など世界的課題をG7が主導していくために、「広島サミット」での連携の強化を呼びかけた。

また、各国に対して、日本が防衛力の抜本的強化に向けて、新たな安全保障関連の3つの文書を決定し、「反撃能力」の保有を明記したことや防衛費を増額することを説明した。そして、英国と「日英円滑化協定」に署名し、自衛隊とイギリス軍が共同訓練を行う際などの対応を定めるなど、各国と安全保障分野での連携も確認した。

日米首脳会談では、岸田首相が「反撃能力」の保有と防衛費の大幅増額を決断したことをバイデン大統領が高く評価した。大統領は、首相に対して「あなたこそ真のリーダーで、あなたこそ真の友人だ」と手放しでほめたたえたという。

岸田首相は、得意の外交で攻勢をかけて、内閣支持率低迷を打開し、4月の統一地方選挙を乗り切って、政権基盤を安定させることを狙っているようだ。だが、首相に1つ忠告しておきたいことがある。外交というものは、成果を出すことを焦ってはいけないということだ。焦ったら「国家百年の大計」を誤ることになりかねないということだ。

その意味で、私は岸田首相に伝えたいことがある。それは、安倍晋三元首相の外交の「真のレガシー」とはなにかということだ。

最初に断っておきたいのだが、私は安倍元首相のことを高く評価しているわけではない。特に、安倍元首相の経済政策「アベノミクス」をまったく評価していない。アベノミクスとは、実は従来型のバラマキ政策を「異次元」の規模で行っただけだったからだ。

本格的な経済回復には「成長戦略」が重要なのだが、さまざまな業界の既得権を奪うことになる規制緩和や構造改革は、内閣支持率に直結するので、安倍元首相にとってはできるだけ先送りしたいものとなった。

結局、安倍長期政権の間、経済は思うように復活しなかった。斜陽産業の異次元緩和「黒田バズーカ」の効き目がなければ、さらに「バズーカ2」を断行し、それでも効き目がなく「マイナス金利」に踏み込んだ。「カネが切れたら、またカネがいる」という状態が続き、財政赤字が拡大した。新しい富を生む産業が生まれず、なにも生まない斜陽産業を救い続けるだけだった。

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