アベノミクスは大失敗。それでも安倍氏「唯一のレガシー」サハリン権益を日本が守れた理由

2023.01.23
 

外交というものは、成果が出るかどうかにかかわらず、各国との確固とした関係を、日々構築していくことが重要だ。確固とした関係とは、例えば、「北方領土4島返還」などの当方の原理原則を決して曲げることなく、一方で相手が当方に望むものを丁寧に受け止める。できることはやり、できないことはできないとはっきり伝える。毅然とした態度を取ることだ。

要は、国家間の関係も、個人間の人間関係の築き方と何も変わらない。日常的に信頼関係を構築していることがなによりも重要だ。自分が儲けることばかり考えていては、信頼は築けない。いつか、突然、劇的に長年の懸案が解決することがあるかもしれないが、それがあればラッキーだという程度の心持でいることが大切だ。

ゆえに、成果を出せず「失敗」と評されることが多い安倍元首相の「対露外交」こそ、日常的な信頼関係の醸成を粘り強く続けた「真のレガシー」であると考える。岸田首相は、このレガシーから教訓を得て、成果を焦ることなく、国際社会の中で日本が確固たる信頼を獲得することを念頭に、地道な外交を展開すべきである。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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