岸田文雄vs菅義偉「権力闘争」が勃発。2人を天秤にかける“統一教会の犬”

 

もともと、「消費税を10%まで引き上げる」という方針を決めたのは民主党政権の野田内閣だ。その張本人である野田佳彦元首相は衆議院本会議における安倍元首相への情感こもる追悼演説で自民党議員の心をつかんで以来、自民党に接近しているといわれる。

ジャーナリストの鮫島浩氏(元朝日新聞政治部記者)にいたっては、「野田佳彦元首相を首班に担ぐ大連立構想が自民党宏池会、立憲民主党、そして双方に濃密なルートを持つ財務省で浮上している」とサンデー毎日や自身のYouTube番組などで指摘しているほどだ。さすがに短兵急すぎる見方だとしても、そういう説が出るほど昨今の立憲民主党の立ち位置は不鮮明になってきている。

そんなわけで、増税問題に関しては、岸田首相にとって野党よりもむしろ自民党内の反対派のほうが気になる存在なのではないか。そちらの動向は政局にもつながってくる可能性が大きいのだ。

防衛増税にいち早く反対を表明したのは安倍派を中心とした右派勢力だが、年明けとともに新たな人物が文藝春秋のインタビュー記事やメディア出演で岸田批判の号砲をとどろかせ、増税にも反対の声を上げた。もちろん、菅義偉前首相だ。

一連の動きのきっかけとなったのが文藝春秋の記事である。そのなかで菅氏「岸田総理はいまだに派閥の会長を続け、(それが)派閥政治を引きずっているとのメッセージになり、国民の見る目は厳しくなる」と述べた。

内閣支持率が急降下した原因が宏池会の会長にとどまり続ける岸田首相の派閥政治にあると分析したわけだが、「いまだに」「引きずっている」などの言い回しには、明らかに無派閥にこだわり続ける自らの存在感を高めるための攻撃的な姿勢がうかがえる。

この記事が出たあと、菅氏はメディアへの出演が続き、岸田首相の政策について問われるなかで、少子化対策や防衛力強化にともなう増税路線に異議を唱えた。

安倍氏の死後、菅氏は不完全燃焼だった総理への返り咲き、もしくは河野太郎氏あたりを担いでキングメーカーになることをひそかに狙っているフシがある。今夏の参院選後に25人規模の政策勉強会を発足させる予定だったが、元首相の死という厳粛な状況を考慮し見送った。その後も、「力を合わせて乗り切る時だ」として勉強会は立ち上げていない。

そこに、突然の岸田批判連発である。実力政治家があからさまにこのような動きを示すときには、必ず明確な意図があるはずだ。選挙で国民の意思を問うことも、国会に諮ることもなく増税路線に傾斜する岸田首相の政治姿勢をとらえ、ここが反岸田の旗を立てるチャンスと判断したのではないだろうか。

言うまでもなく、岸田政権は麻生派、岸田派、茂木派の三派で党内主流を形成している。反主流の立場に甘んじている菅氏は、リーダーを失い流動化しつつある安倍派にアピールし、派閥の枠をこえて反増税、反岸田の一大勢力を作りたいと思っているに違いない。

そこで、今後の政局のキーパーソンに浮上してくるのが萩生田政調会長である。萩生田氏は統一教会との腐れ縁が発覚して間もないだけに、総理候補からは外れたといっていい。しかし、岸田首相に直談判して経産相から党の政調会長に横滑りし、マスコミの追及をかわすのに成功するや、持ち前の党務能力を発揮しはじめた。

とりわけ、防衛増税への反発が党内に広がってからの立ち回りは見事というほかない。政調会長の権限を生かして、増税以外の財源を検討する特命委員会を設置し、自らトップに就くことを決めた。そして、すかさず官邸に岸田首相を訪ねて特命委員会設置の意図を説明、岸田首相から「ここはしっかり深い議論をして確保してほしい」という言葉を引き出した。

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