日本人の「癖」が邪魔をする。中小企業にイノベーションが生まれない訳

 

4.補助金で海外展示会に出ること

保守的な国内メーカーに対して、経済産業省やジェトロは、補助金を活用した海外展示会への出展を促しています。しかし、海外の展示会に出展してビジネスが成功する可能性は著しく低いのが現状です。多くの出展者は、半分は観光目的であり、旅行気分で海外出張しています。事前の市場調査もしないし、現地の競合他社の情報収集さえしていない。展示会で名刺交換しても、展示会終了後に連絡を取る人は意外に少ないのです。これでは売れるはずがありません。

本当に海外で販売したいのなら、海外のバイヤーのニーズを知ることが必要です。そして、バイヤーが欲しくなる完成品を提案することです。未完成のものでは判断できません。

多くのメーカーは技術を見せれば、注文してくれると思っています。例えば、「色は注文通りに染めます」というケースが多いのですか、これは未完成の商品ですから判断できません。そのシーズンに最適な色をつけて展示するのが基本です。

過去のアーカイブを持って行って、「こんなものができます」という展示も多いのですが、これも完成品を出展していません。見本市とは完成品のサンプルを展示して、商談する場なのです。

海外ビジネスで成功した事例の多くは、社長が完成品のサンプルを持って、海外の企業を訪問し、直接セールスしています。社長ですから、質問にも即答できるし、ビジネスの条件も決定できます。そして、社長の情熱を伝えることもできるし、経営の哲学、モノヅクリの姿勢を訴求することができます。

海外の展示会に出展するということは、そのメーカー情報、製品情報が公開されることです。新規取引先を開拓したいと考えている企業は、公開された情報を好むのか、それとも、非公開の情報を好むのでしょうか。公開した情報は競合メーカーも見ているので、手垢のついた情報と見なされます。

日本企業にとって、海外展示会に出展することは誇らしいかもしれませんが、現地の企業にとっては普通のことです。それよりも、日本から社長が直接訪問してくれた方が価値はあります。

日本の展示会にも海外メーカーが多数出展していますが、どれだけの日本メーカーが自社と競合する出展者のブースを回っているでしょうか。海外メーカーをリサーチすることで、日本の強みも分かるし、相手の弱みも分かります。それを理解した上で、海外展示会に出展すべきでしょう。

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