滲む米国社会への絶望。バイデンは年頭演説で何を「語らなかった」のか?

tkn20230213
 

現地時間の2月7日、米連邦議会で行われたバイデン大統領の一般教書演説。昨年の中間選挙で共和党が下院の過半数を獲得し、「ねじれ状態」となってしまった議会での演説は、どのような内容だったのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、「何を語らなかったかに注目」し、その内容を分析。さらに大統領が最も盛り上げたかった箇所について考察するとともに、台湾有事切迫論に一切触れなかった理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年2月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

バイデン年頭演説は何を語らなかったか?/捻れ議会に経済・社会再建への協力を切々と訴えたが……

政治家の演説には、何を語ったかよりも何を語らなかったかに注目した方がいい場合が、往々にしてある。

バイデン米大統領が2月7日行った年頭恒例の一般教書演説がその典型で、日経新聞による全文翻訳を元に大雑把に計測すると、外交について述べたのは冒頭と末尾の修辞的部分を除く全体の何と、7.5%。後は専ら国内問題で、半導体産業の蘇生やインフラ修復の公共投資による雇用創出、富裕層・大企業の優遇削減による税の不公平の是正、メディケアの拡大と福祉・介護の充実などを通じての「中間層の空洞化」の逆転、すなわち米経済の再建の話ばかり。今は手元に比較材料を持たないが、恐らくこれほどまでに徹底的に「内向き」な一般教書演説は珍しいのではあるまいか。

その意味で、外交が余りにも語られることが少なかったことが第1の特徴。第2に、その外交関連部分の半分はウクライナ、半分は中国で、それ以外のことはほとんど何も触れられていないという驚くべき視野の狭さ第3に、その中国関連部分で、昨秋まであれほど大騒ぎしていた「台湾有事切迫」論に全く触れていないこと。

まあ、結局のところ、米国は国内の経済と社会の建て直しで精一杯であるのに加えて、議会が捻れてしまっている中では何が実現できるかがますます定かでなくなって追い詰められている。従って、もはや世界のことなどほとんど構っていられない(せいぜい7.5%程度でそれ以上は無理だよ)というのがバイデンの本音で、そういう彼の心境が図らずも生々しく表れてしまったのがこの演説だったということである。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 滲む米国社会への絶望。バイデンは年頭演説で何を「語らなかった」のか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け