滲む米国社会への絶望。バイデンは年頭演説で何を「語らなかった」のか?

 

▼我々次第だ。それは我々全員次第だ。我々は皆、同じことを望んでいる。暴力のない近隣。コミュニティーの信頼を得る法執行機関。我が子が無事に帰ってくること。法の下での平等な保護。それが我々が米国でお互いに結んだ誓約だ。我々は警察官が毎日命を懸けており、彼らに求めすぎていることを知っている。カウンセラーやソーシャルワーカー、心理学者になり、薬物の過剰摂取やメンタルヘルスの危機などに対応することまで求めている。我々は彼らに多くを求めすぎている。

▼私はほとんどの警察官が善良で、まともな人々だと知っている。彼らは職務に就く度に命を危険にさらしている。だがメンフィスでタイリーさんに起きたようなことが余りにも多く起きている。我々は改善する必要がある。法執行機関に必要なトレーニングを提供し、より高い基準を維持し、全員の安全を確保できるよう支援する。増大するメンタルヘルスや薬物乱用の問題に対処するために、より多くの初動対応者やその他の専門家が必要だ。暴力犯罪と銃犯罪を減らすためのより多くの資源に加えて、より多くのコミュニティー介入プログラム、住宅や教育、職業訓練へのさらなる投資が必要だ。これらすべてが、そもそもの暴力を防ぐのに役に立つ。その上で、警察官や警察署が国民の信頼を裏切った場合は、我々は彼らに責任を負わせなければならない。

▼犠牲者の家族や公民権団体、法執行機関の支持を得て、私はすべての連邦政府職員に対し、首絞めの禁止、無断家宅捜索令状の制限、その他の重要な要素を規定する「ジョージ・フロイド法」に署名した。タイリーさんの母親の言葉の実現に専念しよう。これから何か良いことが起こるべきだ。この議場にいる我々全員が、この瞬間に立ち上がる必要がある。背を向けることはできない。我々が心の中ではしなければならないと分かっていることをしよう。一緒に警察改革を終わらせよう。

▼何かをしてほしい。それは(銃乱射事件が起きたテキサス州の)ユバルディで子供を亡くした親たちと同じ嘆願だった。銃による暴力を何とかしてほしい。30年間で最も包括的な銃安全法を可決した。これには、18歳から21歳までの身辺調査の強化や、自分や他人に危険を及ぼす人々の手から銃を遠ざけるなど、責任ある銃所有者の大多数が支持する内容が含まれる。

▼しかし、我々の仕事が終わっていないことはわかっている。今夜は26歳のヒーロー、ブランドン・ツァイさんが参加している。ブランドンさんは、がんで死にかけている母親のそばにいるために、大学に通う夢を延期した。現在は祖父母が始めたダンススタジオで働いている。2週間前、旧正月の祝賀会の最中、彼はスタジオの正面玄関のドアが閉まるのを聞き、男が彼に銃を向けているのを目の当たりにした。彼は自分が死ぬだろうと思ったが、中にいる人々のことを考えた。その瞬間、彼は行動する勇気を見いだし、別のダンススタジオですでに11人を殺した銃撃者から半自動のピストルを奪い取った。彼は命を救った。我々も同じことをするときが来た。

▼攻撃用武器をきっぱりと禁止する。我々はそれをしたことがある。私は1994年にそれらを禁止するための戦いを主導した。禁止する法律があった10年間で、銃乱射事件は減少した。共和党が同法を失効させた後、銃乱射事件は3倍に増えた。攻撃用武器を再び禁止しよう。

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