トルコ地震が潰したプーチンとゼレンスキーの直接対話。代わる仲介役は日本しかない理由

smd20230217
 

16日未明にはウクライナのインフラ施設に対して大規模なミサイル攻撃を行うなど、開戦1年を前に攻勢を強めるロシア軍。そんな中で行われたミュンヘン安全保障会議に世界の注目が集りました。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、この会合でのとある国同士の「偶発的会談」が、ウクライナ戦争の今後を大きく左右するとしてその理由を解説。さらに島田さん自身が日本政府に対して抱いている期待を挙げています。

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プーチン一人も止められず。腰抜け国際社会に役立たずの安全保障会議

いみじくも昨年2月18日から20日に第58回ミュンヘン安全保障会議(MSC-Munich Security Conference)が開催された数日後、ロシアによるウクライナ侵攻が起こりました。

各国の情報機関から「ロシア・ウクライナ国境でロシア軍の動きがみられる」「ロシア政府から警告のようなメッセージが発せられている」「ロシア軍の核兵器戦略軍のアラートのレベルが上げられた」などいろいろな情報が提供され、ロシアによる軍事的な圧力の存在について触れられ、ロシアによる侵略を阻止しなくてはならないとの考えはシェアされたものの、各国の外交・安全保障関係者が集うMSCの場にロシアがおらず(欠席)、危機回避に向けた具体的な策・道筋を示すには至らなかったのが現実です。

この時点では、欧米諸国のリーダーたちは「侵略を行った場合、重大な結果に直面する」(ジョンソン前英国首相)といった警告はしていたものの、「この時代に武力による侵攻など起こすわけがない。ただのブラフだろう」と思い込んでいた節もあり、まだMSCの時点ではロシア・プーチン大統領の意図を読み切れていませんでした。

私も「ロシアの言動はただの脅しであって、国境を越えた侵攻はないだろう」と考えていましたが、その4日後に「あってもウクライナ東部への限定的な攻撃」と思われていたロシアによる軍事行動は、ウクライナ全土に向けた本格的な軍事作戦という形で実行されました。

その後の戦況については繰り返しませんが、この1年の間に「ロシアによる核兵器使用に対する言及と脅し」が繰り返され、世界は久々に核戦争が起こる脅威について意識するようになりました。

ロシア包囲網に穴を開ける自国中心のハイエナ国家たち

またコロナからの復活のために国際的な協調が必要と謳われていたにも関わらず、世界は分断の方向へ進み、先が見えず、緊張感が高まる国際情勢が作り上げられてきました。

そこでは、あまり望ましい形とは思いませんが、ロシアが国際情勢の中心に再登場し、欧米諸国を中心とした反ロシア網の結束を高めると同時に、これを機に欧米主導型の国際情勢に反旗を翻す国々も出てきました。そして、欧米vs.中ロというbig powersからはあえて距離を置き、実利とバランスに基づいて行動を決める3つ目のゆるい国家群が出来上がりました。

どのグループに属していても、ロシアがウクライナへ軍事侵攻を行ったことへの賛意は存在しませんが、欧米諸国とその仲間たちがロシアに課した非常に厳しい制裁を目の当たりにして「次は我が身」と恐れた国も多かったと聞きます。結果として、多くの国々は制裁の輪には加わらず、代わりにロシアと直接、またはインドやトルコ経由でロシアと取引し、先進国でインフレが起こり、物価が上がる中、ロシアからの安価なエネルギーや食糧の供給という実利を選ぶ動きが加速したことで、対ロシア包囲網・制裁に穴が開き、ロシアの延命に寄与するという皮肉な結果につながっています。

「対ロ制裁は効いている」「ロシアは追い詰められている」といった論調をニュースなどでよく目にしたり耳にしたりしていますが、実際にはロシアはまだ戦闘を続け、ウクライナ東部ドンバス地方においては次第に支配地域を拡大する事態も起こっています。ゆえに戦争が長期化し、なかなか解決の糸口が見えないのですが、これは別にロシア軍が健闘しているということではなく、ウクライナを支援する各国からの支援・バックアップがまだロシアを徹底的に追い詰めるレベルに達していないことも理由としてあると思われます。

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