トルコ地震が潰したプーチンとゼレンスキーの直接対話。代わる仲介役は日本しかない理由

 

ウクライナの懇願に応えるか、プーチンに核ボタンを押させるか

結果として戦争が膠着し長期化しているのですが、今週末に開催される第59回MSC後に、もしNATO各国が予定を前倒しにしてウクライナへの最新鋭兵器の供与を実現するようなことがあれば、戦況が一気に動く可能性があります。すでにドイツ政府とドイツから戦車を供与されているNATO各国は、最新鋭のレオパルト2戦車の供与の前に、レオパルト1型をウクライナに提供する準備に入っているとの情報もありますし、今週、ブリュッセルで行われたウクライナへの支援を話し合う会議でオースティン国防長官が強調したように、春の反転攻勢を実現すべく、さらなる支援が行われるようなことがあれば、膠着状態から抜け出すきっかけになるかもしれません。地上戦が本格化しているウクライナ東部・南部ではという但し書きは付きますが。

ただ残念ながら、戦況に決定的な影響を与えるまでにはならないと考えます。その理由の一つは、ウクライナが懇願している戦闘機の供与は、NATO各国にとってかなりハードルが高いことです。

ゼレンスキー大統領自らワシントンDCやロンドン、パリ、ブリュッセルを訪れて依頼したものの、それぞれの国内での思惑とロシアを刺激しすぎるのではないかとの恐れから、それは実現しそうにありません。ブリュッセルでの支援会議でも話題に上がったと聞きますが、「様々なシナリオ・状況を検討する」とするという形で留まっています。

ロシアがウクライナのインフラ施設を攻撃し、欧米各国からの補給路を断つためにミサイル攻撃をしていますが、それを阻めるのは、防空システムの強化と戦闘機による撃墜と言われているものの、後者については「ウクライナにロシアに対する攻撃性を持たせることに繋がる」という懸念から、「一線を越えることはできないし、すべきではない」という認識に繋がっているようです。

ロシアの核兵器使用のトリガーとなる戦闘機の供与

そして“ロシアを刺激しすぎないように”というラインの裏に必ずあるのが【ロシアによる核兵器使用の可能性】です。

現状では、ロシアが持つ核兵器使用のドクトリンに照らし合わせても、核兵器使用に踏み切る可能性は低い(ほぼない)と考えますが、NATO加盟国がウクライナに対して戦闘機を提供するような決断を下した場合、ロシアにとっては国家安全保障上の脅威が増したと認識され、それが核兵器使用に踏み切る引き金になりかねないと考えられます。そのことは米国も欧州各国も重々承知していると思われることから、戦闘機の供与という要請をあえてスルーしていると思われます。

これまでにウクライナのドローンがロシアの空軍基地を攻撃したり、迎撃ミサイルが誤ってポーランドに着弾したりした際には、米国も英国も戦闘のエスカレーションを恐れて、ウクライナ政府に対して厳重注意を加えたと言われていますが、ウクライナ側がその懸念とメッセージを理解しているのか、それとも意図的に分からないふりをしているのかは、欧米諸国側も見極めることが出来ていないと言われています。そのウクライナに対する信用の欠如も、また戦闘機供与を踏みとどまる理由になっています。

しかし、今週ブリュッセルに集ったNATO各国の思惑と懸念の度合いは、ロシアからの直接的な脅威にどの程度晒されているかによって変わっています。

一番の対ロハードライナーはバルト三国でしょう。NATO各国の懸念は理解しても、自国が直接的に日々面しているロシアからの圧力に対抗するために、ウクライナへのレオパルト2の供与も、戦闘機の供与も躊躇しないという姿勢です。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • トルコ地震が潰したプーチンとゼレンスキーの直接対話。代わる仲介役は日本しかない理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け