トルコ地震が潰したプーチンとゼレンスキーの直接対話。代わる仲介役は日本しかない理由

 

プーチンへの物理的刺激を避ける口だけ番長イギリス

それに対し、同じ近隣国でもNATOの最東端に位置し、常にロシアからのプレッシャーに晒されつつも、独仏に牛耳られるEU政治からは一線を画すポーランドは、レオパルト2や戦闘機のウクライナへの供与には前向きの姿勢を示しつつも、自らはすすんで行動を起こさず、ウクライナに対しては「供与がなかなかできないのは、ドイツが承諾しないからだ」とか、「ブリュッセルでの議論がなかなか進まない」と説明して、責任逃れをしつつ、NATO加盟国でありながら、ロシアとの微妙な関係・バランスを保とうとしています。

NATO加盟はしていませんが、ロシアからの脅威に曝され、次のウクライナとも言われているモルドバ共和国は、昨年にNATOとの特別な協定を結び、旧ソ連製の武器を差し出す代わりに、NATO使用の兵器を供与してもらうというアレンジメントを通じて、すでにロシアからの侵攻に備える立場を明確にし、ブリュッセルでの会議にも、MSCにも参加してNATOとスタンスを同じにしようとしています。

独仏、そしてもうEUではありませんが、NATOの主要国である英国は、物理的にロシアに攻撃される恐れが低いことと、自負もあってか、支援に対しては大盤振る舞いと言わざるを得ない内容の発言や約束をしていますが、これまでのところ、あまり役には立っていません。その裏にはポスト・ウクライナ情勢の世界におけるロシアとの関係回復において主導権を取りたいとの思惑があり、物理的な刺激をロシアに与えないように細心の注意を払っているように見えます。

先日、ゼレンスキー大統領がロンドンとパリを訪れ、そのあとブリュッセルでのEU首脳会合にも参加した際、スナク首相もマクロン大統領も気前のいいオファーはしていますが、その内容が迅速に実現する見込みは薄いと思われます。そして、気になるのが、EU首脳会議のタイミングとの兼ね合いもあるとのことですが、ベルリンを訪問しなかったことです。

ゼレンスキーに痛いところを突かれた?ウクライナとドイツのこじれた関係

ドイツが誇るレオパルト2の供与が戦況を大きく変え得ると言われているにも関わらず、ドイツの首都を訪れなかったことに対しては、ドイツ連邦議会でもウクライナへの感情に変化が出てきていると言われています。また「ドイツは金輪際ロシアからエネルギー資源を買わない」とショルツ首相は言ってみたものの、ポスト・ウクライナ情勢では恐らく真っ先にロシアとの関係修復に乗り出すのではないかとの思惑も見え隠れしているため、そこをゼレンスキー大統領に指摘されたとの見解もあり、ドイツとウクライナの関係は決して良好とはいえない状況でしょう。

今週のオースティン国防長官(米国)が「春ごろにはウクライナが反転攻勢に乗り出し、ロシアを押し戻して、戦争を終わらせるようにしなくてはならない」と発言したのは、あくまでも私の憶測であることは断っておきたいと思いますが、これ以上、アメリカ単独でのウクライナ支援の規模が膨らむことに対する懸念を抱く米国議会向けのメッセージという側面はあるでしょうが、同時にNATOの結束を再確認し、欧州各国に対してウクライナ支援の迅速な実施を迫りつつ、“今、まず集中すべきこと”をリマインドし、揺れるEUの姿勢に釘を刺したと考えられます。

欧州各国はどのようなコミットメントを実施するのか。それは、MSCで示されるかもしれません。

NATO加盟国でありつつ、ロシア・ウクライナ双方に影響力があり、MSCの常連でもあるトルコは、通常であればその特別な立ち位置を活かして今年のMSCの場を利用して様々な働きかけを行うかと思いますが、想像を絶する被害を生み出した大地震に見舞われ、今次会合に参加するかどうかは未定と聞かされています。少なくともエルドアン大統領自身の参加はないですが、MSCという機会を使って調停努力をしようという話もあったことはお伝えしておきたいと思います。

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