岸田首相が 「異次元」という言葉を用いて強調する割に、単なる「バラマキだ」と批判の声があがる少子化対策。そもそも、なぜ日本は少子高齢化したのか、そして抜本的な解決方法は本当に見つからないのでしょうか? 1250年以上の歴史を持つ愛知県清須市の清洲山王宮「日吉神社」の神職三輪家56代である宮司・三輪隆裕さんは『宮司のブログ』の中で、岸田政権の少子化対策を「愚策」として、先進国が少子高齢化に陥るのは「必然」である理由を解説しながら、「日本経済を再び起動させるには2千万人規模の移民が必要だ」と大胆な解決策を提案しています。
【関連】文鮮明夫妻“世界支配の夢”に利用された「日本会議」の自業自得。創建1250年の神社宮司が斬る保守派の大罪
三輪隆裕(みわ・たかひろ):
清洲山王宮日吉神社 宮司。至学館大学客員研究員。1948年、愛知県にて出生。名古屋大学文学部卒業、諏訪神氏に連なる神職三輪家56代。保守系の国会議員らで組織される日本会議と、全国に8万の拠点を持つ神社本庁による「全体主義」「戦前回帰」に異を唱える言論活動をおこなっている。また、IARF(国際自由宗教連盟)を通じて世界に異宗教間の相互理解と共存を呼びかけている。
岸田政権「異次元の少子化対策」が“愚策”と断言できる理由
岸田政権が本格的に取り組むとしている少子化対策は、愚策である。
何故か?
本来、近代化を達成して便利になった社会に住む人々は、必ず、核家族化し、少子化社会をつくる。
これは小手先の育児対策や子供手当などで、覆すことができる傾向ではない。確かに、少しは出生率が改善されるであろう。それは近代化と少子化が先行した西欧諸国の例を見れば理解できる。しかし、それとても、根本的な改善にはつながっていない。
もう少し大きな視点で考えてみることだ。20世紀は人口増加の時代であった。世界の人口が100億を超えてさらにその先まで増え続けるとするならば、一体、地球は人類の居住地として適切であり続けるのかということが話題となった。極端な論者に至っては、戦争や疫病で人口を減らすことが必要であるといい、人口削減のための策が権力者たちによって色々と講じられているはずだというようなありもしない陰謀論を声高に言い募る人々もいた。近年のコロナワクチンは人口削減の手段であるといったデマはその一つである。
結局、人類は将来的には、地球を故郷として、宇宙へ植民するという仮説が立てられ、それがSFの題材となった。
近代化が「少子化社会」を生み出すのは歴史的必然
ところが、21世紀に入って、一転して、人口減少が将来の人類の最大の課題であると言われるようになった。つまり、近代化を達成した社会では、人口減少が起きるのは、人類史的な必然なのだ。それによって、世界人口が調整され、人類は宇宙へ脱出することも、互いに殺し合うことも必要でなくなるのだ。
もう少し、細かく考えてみよう。近代化は、急激な経済成長に伴って達成される。それはまた、田舎から都市への急激な人口移動を伴う。田舎は大家族の共同体社会である。そこから人々が都市に移動すると、人々は会社や工場や店舗や役所で働くようになる。そして互いにすれ違って暮らす「孤独な群衆」となる。つまり機能集団や集列集団を中心とした社会に変わっていく。家族形態は核家族や単身世帯が中心となり、少子化社会となる。これは必然である。
しかし、その始まりの頃は、田舎から都市に移住した若い人々が結婚し、子供を産み、消費社会を作り、そして生産に従事するので、経済の好循環が生まれ、高度経済成長が始まるのである。
つまり、近代化は高度経済成長を生み、次に少子化社会を生み出すのだ。
このように考えると、近代化が達成された社会で、出生率を上げようとするのは、社会の流れに逆らう行為だ。しかし一方、少子化社会は、高齢化社会でもある。生産年齢人口は急減し、高齢者の年金や医療を支える社会の経済力は減少する。少子化対策が叫ばれる所以である。
2千万人規模の「移民政策」こそが日本の経済成長を再起動させる