2.日本企業は疑似単身赴任社会
男性社会の問題点は男女の性別分業にあると言われています。男性は会社で働き、女性は家事と育児を行う。そのため、女性の社会進出、労働進出が遅れているというものです。
特に日本の男性は長時間労働で、家庭不在になりがちという問題点もあります。
この問題を解決することはできるのでしょうか。一つの解決策として、「ワークライフバランスを考えましょう」と言われますが、この問題は個人の意識を変えるだけで解決するのでしょうか。私は、もっと歴史的かつ社会的な問題があると思っています。
江戸時代、参勤交代で江戸に詰めている武士は単身赴任でした。家族は国許にいて、男性だけが江戸で勤務していました。
同様に、商人も単身赴任でした。結婚して所帯を持てるのは主人か番頭くらいのもので、一般の従業員は独身でした。
その他、農村から次男三男が江戸に出稼ぎに来ていました。その結果、享保7(1722)年の江戸は総人口48万人のうち、男性は31万人、女性は17万人で、男性は女性の1.8倍もいたのです。
男性の比率が高いので、性産業が盛んで、女性の方が稼ぎが良かったとも言われています。
日本の男性社会は西欧の男性社会とは異なります。外国企業では、海外赴任する場合、家族と一緒に赴任します。確かに、男性が働いて女性が家事をしているのですが、仕事の以外の時間は、夫婦(男女)が一緒に過ごすのが基本です。
ところが、日本企業の海外赴任は単身赴任が多いのです。奥さんがいないので、現地の性的なサービスを利用する人も少なくありません。
これは江戸時代から続く日本企業の伝統です。本来、仕事や商売は単身赴任で行うもの、という暗黙の掟が存在しています。ですから、仮に家庭があったとしても、職場の男性同士の付き合いが優先されます。日本社会の問題は、男性社会以前に、疑似単身赴任社会であることです。
昭和の時代には、この伝統が生きており、仕事が終われば、毎日のように夜の街に繰り出し、ホステスと話したり、触れ合ったりしていました。実際には家庭があっても、単身赴任の意識を持つことが掟でした。
疑似単身赴任社会の職場は男性の掟で支配されています。女性を性の対象として見る癖がついているので、当然セクハラになります。
まずは、疑似単身赴任文化を完全に撲滅しない限り、男女共同参画も実現しません。
そこで、提案です。もし、会社の経営陣が単身赴任文化を撲滅する意志があるなら、年に数回、会社主催で夫婦同伴のパーティーを開きましょう。そして、所属する業界団体の懇親会も、夫婦同伴にしましょう。秘書や女性社員の同伴は認めず、あくまで奥様同伴です。
そうするだけで、バーティーの雰囲気が変わり、会話の内容も変わるでしょう。単身赴任文化から夫婦文化への転換は、日本企業が国際化する第一歩でもあります。
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