ついに覚醒した「眠れる獅子」中国・習近平が狙いを定める“3つの果実”

 

もはや欧米諸国の自制の呼びかけを受け入れぬイスラエル

ただ、今回の和解を受け、大きな懸念が浮上します。イランとイスラエル間の武力衝突に向けた緊張がこれまでになく高まる気配です。

これまでイランとサウジアラビア王国の対立を利用して、対イランの防波堤としてサウジアラビア王国を利用できたイスラエルとその背後にいる欧米諸国ですが、そこに中国が割り込み、かつサウジアラビア王国をイランの側に引き寄せる工作をしたことで、中東地域におけるパワーバランスが崩れてきています。

常々、サウジアラビア王国とその仲間たちは「イランが核開発に走るのであれば、自分たちも核開発・配備に動く」という牽制を行ってきましたが、イランとサウジアラビア王国の間に不可侵協定と核の不使用の約束がなされ、かつイラン核合意の当事国で、自らも核保有国である中ロがイランの核開発に手を貸すような事態に発展した場合、すでに核兵器を配備していると思われるイスラエルとの核兵器の対峙という事態が生まれかねません。

特にここ最近、アメリカとの緊張関係も顕著になってきているイスラエルですが、欧米諸国からの自制の呼びかけを今後は聞き入れない可能性が出てきます。

しかし、実は中国もロシアもイスラエルとの関係改善に乗り出していることもあり、経済的な結びつきも強まってきているということですから、もし中国がさらに手を広げ、イラン・サウジアラビア王国そしてイスラエルとの緊張緩和のお膳立てに成功するようなことがあれば、世界の勢力地図が大きく塗り替えられることになるかもしれません(まさにノーベル平和賞ものです)。

もちろん、イスラエルを中東・地中海地域における“51番目の州”ぐらいに考えているアメリカが黙っていることはないと思いますが。

モスクワ訪問という大きな賭けに打って出る習近平

そしてその驚きと焦りは、別の側面でも発揮されています。それが【中国によるロシア・ウクライナ戦争の停戦仲介の申し出】です。

この件については先週号などですでにお話ししておりますので、内容については繰り返しませんが、戦争・紛争の当事者であるロシア政府もウクライナ政府も、共に条件付きながらも、中国の仲介案に一定の評価を下しています。

【関連】賭けに出た習近平。ウクライナ戦争「和平案」提示のウラに透ける本音

ウクライナのゼレンスキー大統領は歓迎の意を述べたうえで、「中国が噂されているようにロシアに武器供与を行っているのであれば、到底受け入れることはできない」と話し合いのテーブルに就くための条件を提示していますが、これはあくまでもウクライナに武器支援をしてくれているアメリカと欧州各国に配慮したメッセージとも捉えることが出来、実際に中国(王毅政治局員)に何を伝えたのかは分かりません。

ロシアについては、王毅政治局員が直に緊張した面持ちでプーチン大統領に仲介案を提示し、詳しく意図を説明したと聞いていますが、その際にプーチン大統領が王毅政治局員に託した要望である【習近平国家主席の訪ロ】は、3月20日の週に実現のはこびとなりそうです。

先週号でお話しした【早すぎてもだめで、遅すぎてもだめ】という非常にデリケートな訪ロのタイミングが設定されたということは、中国、および3期目をスタートさせた習近平国家主席が大きな賭けに出たのだということと理解できます。

そして注目すべきは、訪ロのタイミングに合わせてゼレンスキー大統領とのオンライン会談も予定されていることですが、これが本当にオンライン開催なのか、それともサプライズ訪問を決行して、キーフでの直接会談になるのかは分かりません。ただ直接会談が敢行される場合、それは先に訪れるモスクワで、仲介案に対してプーチン大統領からのGOサインが出ていることが最低条件となるでしょう。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • ついに覚醒した「眠れる獅子」中国・習近平が狙いを定める“3つの果実”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け