ついに覚醒した「眠れる獅子」中国・習近平が狙いを定める“3つの果実”

 

ゼレンスキーが欧米諸国に向け投げる牽制球

ただモスクワとキーウ双方で、中国による仲介を歓迎し、受け入れるような決定が成立した場合、中国はロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた主役に躍り出るだけでなく、戦後のウクライナおよびロシア復興において主導権を獲得することに繋がります。

先週号でもお話ししましたが、王毅政治局員が提示した仲介案には、すでに戦後の経済支援・復興支援案も明示されており、中国側もその実施案の策定に取り掛かっているとの話も耳にしています。

ポスト・ウクライナの話し合いとアレンジで主導権を握りたいアメリカと欧州各国としては、中国のプレゼンスの高まりは避けたいはずで、お得意の情報戦を通じた中国への警戒心の表明と、ウクライナへの圧力を強めています。

その一例がこれまでにない強い語調で中国を非難している英国で、その中で「中国は世界秩序に対する挑戦をしかけており、私たち民主主義陣営はその企みを阻止しなくてはならない」と述べています。

しかし、欧米の結束も一枚岩ではなく、欧州内でもロシアに対する強硬姿勢を貫く英国と北欧諸国、およびバルト三国という陣営もあれば、戦争の終結を進めたいフランスとドイツの陣営もあり、欧州においても歩調が乱れています。

そして、アメリカ国内でも来年秋の大統領選に向けた政争がヒートアップし始めており、その争点の一つが“アメリカによるウクライナ支援の継続の可否”と“ロシアとの関係をいかに設定するか”という内容で、議会下院のマジョリティーを共和党が握り、夏以降の対ウクライナ支援の継続に疑問を呈しているという黄信号が灯っていることも、ウクライナへの影響力低下を招く可能性がある懸念と認識できます。

それに気づいているのか、ゼレンスキー大統領も中国が提示した仲介案に関心を示すことで、欧米諸国に牽制球を投げているという見方もできます。

なぜ欧州各国のウクライナ支援は煮えきらないのか

そして中国とウクライナの長年の友好関係の存在は、欧米諸国にとっては一つの懸念事項だと言われています。中国初の空母「遼寧」はもともとウクライナが持っていた旧ソ連の空母を買い取り、中国で改造したものであり、その売買の際に、中国の人権問題への懸念を理由にウクライナに欧米諸国が圧力をかけたにもかかわらず、ウクライナは契約を実施し、その後、中国の海軍・空軍力の向上に寄与することになった事案は、欧米諸国がウクライナに対して膨大な軍事支援を行う背後で、常に忘れられてはいない懸案となっているようです。

それが、米国民主党政権という例外は別として、欧州各国によるウクライナ支援が煮え切らない一因とも分析できます。

中国やロシアによる途上国支援(アフリカ、中東、アジア、中南米など)は、政治的なイデオロギーは横に置き、ピュアな経済的な影響力の拡大と外交的な影響力の拡大という目的に絞って行われているので、エチオピアやケニア、中南米諸国の外交筋曰く、「非常に気前が良く、かつ迅速に実施されるため、評価は高い」とのことでした。

もちろん、スリランカやモルジブのように一帯一路による債務の罠という側面も否定できませんが、中国による長期の戦略的パートナーシップ協定の締結と迅速な経済支援などは、多くの途上国、そしてグローバル・サウスのハートをつかむのに寄与しているようです。

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