習近平が視野に入れ始めた「請われるかたち」での台湾統一
今週起こったその典型例が、これまで台湾との外交関係を重視してきたホンジュラスの方針転換の兆しです。2期目に入ったカストロ大統領は、選挙公約として中国との関係強化を謳って当選しましたが、大統領就任式に台湾の副総統を招待するなど、これまでの台湾重視の姿勢も踏襲してきましたが、今週に入り、レイナ外務大臣に中国(北京)との国交樹立の手続きを指示し、本格的に中国への接近姿勢を示し始めました。
恐らく裏庭で中国の影響力が高まることを嫌うアメリカが介入してきて、ホンジュラスに圧力をかけるため、早期に国交樹立が実現するかは分かりませんが、もし今年中に実現するような事態になった場合、これは3期目を迎えた習近平国家主席にとっては、国際社会における中国シンパを増やすことが出来、習近平国家主席が全人代でも強調した「中華統一の実現」という“宿願”に近づくという大きな得点になると思われます。
台湾への武力侵攻というカードはチラつかせつつ、可能な限り台湾の存在意義(raison d’etre)を薄めることで独立を阻み、中国に吸収するという、台湾の外堀をじわじわ埋め、国際社会における台湾の立ち位置を奪うという方法で“請われるかたち”での中華統一を視野に入れ出したようにも思います。
全人代が終わり、習近平体制も正式に3期目に入ったことで、一気に中国の外交的な動きが再活発化してきました。今後、どのような戦略で影響力を広め高めようとしているのか。その答えは早ければ来週早々に見え始めるかと思います。
日本のエネルギー安保に灯る黄信号
そのような中、中国を隣国に持ち、今週、韓国との緊張緩和に乗り出し、そして北朝鮮の威嚇の頻度と度合いが高まっている緊張感たっぷりな地政学リスクに直面している日本は、どのように振舞い、北東アジアおよびアジア全域、そして国際社会においてどのような立ち位置を狙うのか。しっかりと考えないといけません。
中東においてもすでに中国(とロシア)に権益を奪われ、エネルギー資源の獲得競争が不利になってきていると思われる中、日本の発展に欠かせないエネルギーの安定調達という大きな使命に黄色信号がともり始めているように思います。
中国はこのまま拡大を続けるのか?それともどこかで躓いてしまうのか?
今後の国際情勢を占うにあたり、これから数年の中国の動きからまた目が離せません。
獅子は冬眠から本当に目覚めたのでしょうか?
以上、国際情勢の裏側でした。
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