韓国でおこなわれ、多くの日本人も参加した「合同結婚式」も話題のカルト教団・統一協会。安倍晋三元首相の殺害事件を機に明らかになった、日本の政治へ深く関与している実態と大きな影響力は、私たちの想像をはるかに超えるものでした。去る3月に刊行された『統一協会の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』(扶桑社新書)の出版を記念し、戦う漫画家・小林よしのり氏と有田芳生氏、そして作家の泉美木蘭(いずみ・もくれん)さんをゲストに迎えたスペシャルライブ「オドレら正気か?『統一協会の闇special』」の模様を、前回のVol.1に続いてテキストにて特別に公開いたします。
※本稿での世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の表記は、各氏の意向に基づき、小林氏・泉美氏の発言部分は「統一協会」、有田氏の発言部分は「統一教会」としています
有田芳生×小林よしのり 特別対談アーカイヴ
● 有田芳生×小林よしのり Vol.1
● 有田芳生×小林よしのり Vol.2
● 有田芳生×小林よしのり Vol.3
有田芳生×小林よしのり特別対談(2) 公安が「無断侵入」「50人で尾行」の衝撃。なぜ彼らは裏ビデオまで持ち帰ったのか
小林:有田さんを公安が付け狙っていたのはなぜなの? 有田さん、なんかそんな危険なことしているの?
有田:いや、彼らが言うには、特にテレビで過激な発言をしたときに危ないなっていうことで身辺警護でつけてたと。僕は当時ね、酒は好きなんだけど、たまにしか飲みに行けなくて、池袋にあった沖縄料理の『おもろ』っていう店にテレビ局が車で送ってくれて、1回ぐらい飲みに行ったことあるんですよ。「まれに飲みに行ってましたよ」って言ったら、公安は「いやそこにもいたんだ」って言うんですよ。
泉美:身辺警護で仕事場の中まで入ってくるってどういうことなんですか?
有田:それは身辺警護じゃないでしょうね。
泉美:そうですよね。だから要するに、有田さん自身が統一協会と関係があるんじゃないかとか疑われてたっていうこと?
有田:いや、どういう資料を持っているのか知りたかったんじゃないかな。当時は四畳半一間の和室の汚いところに資料が散乱してたんです。でも警察に言われて、あれっと思い出したことがあったの。その部屋から神保町に引っ越したときに、押入れの中のダンボールにポンっと置いていたものがなくなってた。それは警察、警視庁公安部が持っていったと思うんです。

有田芳生氏
何がなくなっていたかというと、『噂の眞相』っていう雑誌があったじゃないですか。『噂の眞相』と僕は親しかったので、噂の真相の当時の副編集長が、あるビデオをくれたんです。で、あるビデオっていうのは、飯島愛さんの裏ビデオだったんです(笑)。だけど僕はそんなもん家に持って帰れるわけないし、でも、事務所にはテレビもないんでね、だから押入れの中のダンボールの一番上にポンと置いておいた。それが引っ越しのときにないんだよ。押収されているわけですよ(笑)。
泉美:押収っていうか泥棒ですよね。飯島愛泥棒ですよ、それ。
有田:だってないんだもん。印象にあるでしょ? 僕はそんなん家にも持って帰れない、事務所にもテレビはない。だからもらったけども、本当にダンボールにポンと置いていたの。それは印象に残ってますよ。そしたら引っ越しの時にないんだもん。2回入ったって言ってました。2回ですよ。
小林:それとついでに、個人的な趣味として(笑)。

小林よしのり氏
泉美:要するに警察は、それだけ秘密裏に情報元を欲しがっていて、本気で統一協会を摘発しようと考えてたっていうことに繋がるんですかね?
有田:確かに良心的に考えれば身辺警護をしてくれてたんだと思う。と同時に、当時は多くの幹部にもこっそりと会っていたんで、誰と会ってるのかを見張っていたのかなと思いますけどね。
小林:統一協会にしろオウムにしろ、カルト宗教団体の情報を人よりもいっぱい集めてるかもしれないと見られてるってことだよね。だからその中にどんな資料があるのかに興味があって探していたんだろうね。ジャーナリストはそういうもの持ってるもんだっていう感覚がおそらくあるんでしょう。漫画家はそんなに持ってないけどね。怒りに任せてめちゃくちゃ描いてるけど。ジャーナリストなら案外、根拠となる資料を持ってると思うんですよ。それで、そのように調べてしまうことになるんじゃないかな。
有田:資料はありますね。1987年の5月3日に、兵庫県西宮市の朝日新聞襲撃事件は散弾銃で襲われて、当時29歳の小尻知博記者が殺されて、警察は右翼、新右翼を捜査すると同時に、統一教会の信者52人リストアップしたんですよ。それはメルマガにも書きましたし、これまでもちょっと紹介したかな。
捜査当局の資料として統一教会の重点対象一覧表があって、A4で3枚、52人の信者たちの名前が書かれていて、一番上に名前のある人は勝共、つまり国際勝共連合の勝共非合法軍事部隊と書いてある。2番目の人は自衛隊出身者で自衛隊を辞めて右翼に行った人物。市ヶ谷の自衛隊にいたんだけれども、右翼になった人。そしてその人の備考欄には、統一教会軍事部隊って書いてある。そういう資料は持ってたんでね。彼らが入ったときにはなかったんだけれども、確かにジャーナリストはいろんな資料は入手しますからね。漫画家と違って。
小林:そうそう。ジャーナリストだと、そこは大きいよね。直接取材に行かなきゃいけないからね。昔、鈴木邦男が、赤報隊の件でかなり取り締まりを受けて、ものすごい憤慨していたんだけれども、赤報隊が統一協会と関係があるみたいなことは、鈴木邦男とか一水会のみんなは知っていたかもしれない。
だから統一協会に関しては、一水会の人たちはすごく敵対的というか、批判的な感じがあったから。それはもう自分たちではなくて、統一協会だっていう感覚があるんでしょ。統一協会問題に関しては、有田さんとの対談本を担当編集者が送ったら「すごく小林さんを応援してます」みたいなメールを送って来たらしいから、彼らも統一協会は本当は赤報隊とかにも関わりがあるんじゃないかと思っていたのかもしれない。