聞こえ始めた「プーチンはクソ馬鹿」の声。ロシア国内でも噴出する独裁者批判と“敗戦”の空気

 

「自分が大統領なら1日で戦争を終らせる」。トランプの大風呂敷

もう1つ、米国の支援がいつまで続くのかが問題である。大統領候補のケネディ氏は、800もの海外の米軍基地を閉鎖するという。米国の国防予算は世界一でありながら内部から空洞化してきているとした。

一方、トランプ前米大統領は10日、ロシアによるウクライナ侵攻について、自身が大統領であれば戦争は起こらなかったとの認識を示した。

また、トランプ氏は、現在自身が大統領なら「1日で戦争を終わらせるだろう」と述べた。「彼らは共に、弱みと強みの両方を持っている。24時間以内に戦争は解決する。完全に終わるはずだ」とトランプ氏は言う。

プーチン氏を戦争犯罪人と考えるかどうかについては、「彼を戦争犯罪人ということにすれば、現状を止めるための取引が非常に難しくなるだろう」「彼が戦争犯罪人となれば、人々は彼を捕まえ、処刑しようとする。その場合、彼は格段に激しく戦うだろう。そうしたことは後日話し合う問題だ」とトランプ氏。

「敗戦」の方向に傾くロシア国内の世論

5月9日の対独戦勝記念日に、プーチンの演説や軍事パレードなど恒例の催しが行われた。プーチンはロシアの崩壊を狙う西側に対し祖国を守るための戦争であることを強調し、あたかも被害者のようにした。そして規模を縮小した軍事パレードは外国メディアの取材を許可せず、現役の戦車も航空機も登場しないものだった。

プーチンは10日、予備役の民間人を招集して軍事訓練を行うことを認める大統領令に署名したが、予備役を集めて志願兵にしたいようである。兵員不足が起きていて、戦線を維持できない状態である。

そして、欧州通常戦力(CFE)条約の破棄に向けた法令に署名した。欧州通常戦力条約は通常兵器の上限を定める軍縮合意であるが、既にロ軍は通常兵器を大幅に失い軍縮している状態である。

それと同時に、ロシアのペスコフ大統領報道官は、ウクライナでの軍事作戦について「非常に難しい」状況だが、今後も続けるとの立場を示した。「特別軍事作戦が進行している。非常に難しい作戦で、当然ながら特定の目標は1年で達成した」と述べた。

それと、12日、ペスコフ大統領報道官は、西側メディアのプーチンへの直接取材やインタビューなどを原則拒否するにした。「真実を伝えようとする姿勢が見られない間は彼らと話さない」と述べた。

このあたりが、ロシア上層部でもウ軍に負ける可能性を見始めているように感じる。

そして、ロシア国民もかなり不安になっていると独立系世論調査機関『レバダセンター』の副所長は言う。「4月の世論調査で75%が“戦争を支持しロシアが必ず勝利すると信じている”という結果が出ている。

しかしこれは表面的な結果だ。より深い分析をすれば国民はこの戦争に不安になっていることが分かる。不安が圧倒的に多い。どんなウ軍の反転攻勢があるのかわからない。反転攻勢とは単なる戦闘ではなく、弱いウ軍に抵抗できないロシアの威厳に対する攻撃でもある。そもそも何のために、この戦争を始めたのかと国民が考え始める」という。

この調査報告書では、ウクライナの反転攻勢を心配している人が62%。欧米からの武器供与を心配している人も77%。何より今後難しい局面が来る、これまでより大変なのはこれからと考えている人が過半数いる。どんどん状況が厳しくなっているという受け止めが感じられるという。敗戦の方向にロシア国内では世論が傾いている。この傾向は、プリゴジンの発言も影響しているようだ。

このような不安から、ロ軍の元大佐イーゴリ・ストレルコフ氏らが創設した民間団体「怒れる愛国者クラブ」が12日、ウクライナ侵攻は「停滞している」としてプーチン政権を批判した。ロ軍の戦いぶりを「受け身に回っていて、作戦の目的が達成できていない」と訴えた。「戦略と目的がはっきりせず、勝利に必要な手段を使っていない」と指摘。社会のあらゆる力を総動員すべきだと述べた。

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