一枚岩ではないG7
G7は、自由、民主主義、言論の自由、信教の自由、人権などの価値観を共有しています。そして、「ウクライナ支持」で一体化しているように見えます。
しかし、内実を見れば、「一枚岩」とはいえない状況がある。たとえば、ドイツ、フランス、イタリアなどは、「多少ウクライナの領土をロシアに譲っても、はやく停戦に持ち込みたい」と考えがち。
ドイツは、戦争が始まる前、天然ガスの55%をロシアに依存していました。それを1年で、「依存度ほぼゼロ」まで持っていった。すごいことです。
しかし、ロシア産の安いガスが買えなくなったことで、高いLNG(液化天然ガス)を輸入することになった。結果、ドイツ国内のエネルギー価格が暴騰しました。国民の中には、「なぜ俺たちは、ウクライナのために、ここまで犠牲にならなければいけないのだ!」と不満を持つ人がいます。
そして、ロシアと陸続きの大陸欧州の国々は、ロシアが世論工作をしやすいのです。
ウクライナ支援の中核は、アメリカとイギリス。アメリカは、どうでしょうか?トランプさんは、大統領に返り咲いたら、「最優先でウクライナ支援を止める」と宣言しています。テレ朝ニュース3月5日。
<「アメリカ・ファースト」を強調するトランプ前大統領が演説を行い、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ、自身への支持を訴えました。>
トランプさんは、よくも悪くも「有言実行」の人。だから、彼が再び大統領になれば、本当にウクライナ支援を止める可能性が高いです。ゼレンスキーに残された時間は、長くないのかもしれません。
すばらしかった岸田外交
さて、岸田さんは3月、ウクライナの首都キーウを電撃訪問しました。その時、「ウクライナの美しい大地に平和が戻るまで、日本はウクライナと共に歩んでいきます!」と決意を語りました。そして岸田さんは、約束を守ったのです。
ゼレンスキーが訪日した。そして、G7の首脳たちとリアルに会談することができた。バイデンは、戦闘機F16をウクライナに供与することを、容認することにしました。つまり、欧州の国々がウクライナにF16を供与することに反対しない。ウクライナにF16が入ってきます。
また、ゼレンスキーはインドのモディ首相と会談しました。二人ががっちり握手した姿は、インド首相官邸ツイッターで世界に拡散された。「中国とインドがいるから孤立していない」と主張するプーチンは、衝撃を受けたことでしょう。
ゼレンスキーは5月21日、岸田さんと会談した時、以下の発言をしました。
「今回は総理の招待で初めて対面で(G7サミット)に参加することができて大変うれしく思っている」
「ウクライナの主権と領土の一体性、ウクライナの人たちに対する支持を表明してもらい、一生忘れない」
「一生忘れない」そうです。
平和主義を掲げる日本は、ウクライナに武器支援ができません。しかし、岸田さんは、G7の国々が、一体化してウクライナ支援を継続する決意を固める場を創ったのです。実にすばらしい活躍でした。一日本国民として感謝したいです。
ウクライナでは、反転攻勢がはじまっているようです。ウクライナが勝利し、習近平が「やはり台湾侵攻は無理だ」となる未来を願いましょう。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年5月24日号より一部抜粋)
image by: 首相官邸
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