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ロシアが最前線で行ってきた「在庫一掃セール」

NATO側・ロシア中国側に関係なく言われているのは「消耗戦に持ち込まれた場合、状況はロシアに有利になる可能性が高い」という分析です。

質ではNATOに支えられるウクライナ軍に軍配が上がるとされ、NATOの兵器に習熟しているという前提であれば、短期決戦に賭ければウクライナ有利になると予想されますが、実際には、ドイツのNATO軍基地での訓練を受けたとはいえ、内容はつけ刃程度のものと言われ、習熟しているというレベルにまでは達していないようです。

つまり、NATO各国から供与されている武器の性能をまだ十分に引き出せないという現実が、ウクライナ側にあります。

ただし、2014年以降、ロシアが予想していた以上に米英の軍事支援がウクライナに入っており、全体的な能力としては、ロシアに次ぐユーラシア大陸第2位の軍事力を誇るレベルに達しているとされていますが、先のバフムトの攻防を含め、各地での戦闘で熟練度の高い戦闘員の多数が死亡していると言われており、現在の実力はわかりません。

それに対してロシアは、想定をはるかに超える数の死傷者が出ていますが、質よりも量で対応するという人海戦術を取っていることに加え、これまでに破壊されたり、遺棄されたりした装備の多くは、耐用年数を超え、保管とメンテナンスにコストがかかってきたものであるという情報もあり、一種の“在庫一掃セール”をロシアがこれまで行ってきた可能性があるとのことです。

言い換えると破棄するにも保管するにもコストがかかる古い兵器を実戦で使用することでコストを削減し、ロシア不利というイメージを創り出しつつ、虎の子の最新鋭の兵器は可能な限り温存するという戦略ではないかと思われます。

ただその最新鋭の兵器の実力は、これもまた未知数ですが。

ここで勝敗を分ける要素があるとしたら、「NATOからのウクライナへの支援が高いレベルで継続され、遅延なく迅速に供給し続けられること」だと考えますが、最近になって、この継続にも暗雲が漂い始めています。

その元凶は、NATOが“表向き”は禁止してきた越境攻撃がウクライナとその支持者によって実行されるケースが増加し、その越境攻撃にNATOから供与された装備・兵器が使用されているとのリークです。

特に多くの兵器・弾薬を供給しているアメリカと、戦況を一転させることが出来るかもしれないレオパルト2戦車を供給しているドイツにとっては、供与の条件があくまでも“ウクライナ本土の防衛と、ロシアによる侵略への反攻に限る”という内容で、国内を説得してきた経緯から、いかなる形での越境攻撃もレッドラインになってしまう可能性が出てきます。

特にドイツのショルツ首相は、これまでドイツが非常に慎重な姿勢をきた他国への武器供与・軍事支援を行うという的判断に踏み切った手前、自国の武器がロシア領の攻撃に使われることが明るみに出ると、80年弱かけて克服してきた“侵略者”としてのレッテル・イメージを彷彿させることに繋がりかねないとの懸念が出てきています。

ウクライナのゼレンスキー大統領が熱望し、G7広島サミットの場でバイデン米大統領のOKを取り付けたF16の供与が、英国などがオファーするパイロットの訓練と共に、早期に実現すれば、戦況を有利に変え得るゲームチェンジャーになると期待されますが、それがなかなか進まないのも、アメリカとNATO各国にある国内事情とともに、常に付きまとう「武器の転売への懸念と武器管理の不徹底に対する批判」、そして時折行われるウクライナの越境攻撃にF16が使われた日には、ロシアのプーチン大統領とロシア政府内の強硬派のレッドラインを超えさせ、アメリカとNATO各国を直接的な対ロ戦争に引きずり込むことにつながるとの懸念ゆえです。

その結果、ウクライナも十分な戦力を確保できないまま、ロシアとの攻防戦を繰り広げざるを得ず、NATO各国のウクライナ離れがいつ起きるか戦々恐々としながら、戦争を継続するというとんでもない状況に陥ることになります。そして戦争は不可避的に長期化していくこととなるでしょう。

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