米国を「中国の驚異の防波堤」に使いたいインド
モディ首相もジャイシャンカル外相も支持基盤は強固であるため、次回選挙でもモディ首相優位は変わらず、ジャイシャンカル外相も続投すると言われているため、アメリカとのちょうどいい距離感を維持することで、インドの国際社会における立ち位置と状況の改善を狙っているとも考えられます。
アメリカとインドが抱くそれぞれの願いが相容れるものかどうか、そして仮にそうであった場合、どのような結果が生まれるのかは未知数ですが、その答えはそう遠くないうちに分かります(ちなみにG7広島サミットにグローバルサウスの国々を招いたことで得られるはずだったプラスは、ゼレンスキー大統領訪問の余波でマイナスになってしまったようですが)。
6月21日から22日にロンドンで開催されているウクライナ復興会議にはG7各国の外相が参加し、それに加え400社を超える企業が参加していますが、58兆円とも言われる必要額と、まだ戦争終結のめどが立たないという非常に不安定な状況下で、どれだけ迅速に投資にコミットできるかは未知数です。
報道は民間企業による対ウクライナ投資の糸口として報じていますが、実際に民間資金をウクライナに注入するには、まだ基盤が揃っていない気がします。
ウクライナのダム破壊で出来た「穴」を突いてくる中国
そこに追い打ちをかけているのが、実行犯はまだ確定していませんが、被害が拡大し続けるカホウカ(カホフカ)ダムの決壊により、ウクライナの穀倉地帯が水に沈んだことに加え、国連とトルコによる仲介で実施された黒海経由のウクライナ産穀物の輸出ターミナルが使用不可になったことも、先行きをさらに不安にさせる要因となっています。
2021年から運用されていたドニエプル川沿岸(黒海への河口近く)の港湾施設も今回の洪水で大被害を受けて使えないため、穀物・資材などを運び出したり運び入れたりする重要な口が閉ざされ、それもまた民間投資を思いとどまらせる要因になっているようです。
穀物・食料の輸出というカードを用いて仲裁のきっかけとしようとした国連もトルコも重要なカードを失っていますし、トルコのエルドアン大統領も、ウクライナの港湾施設の復旧よりは、まず自国の大震災による被害の復旧が先であることから、今回はあまり積極的に関与できないというジレンマにあたっているようです。
そしてその穴を突いてくるのが、中国政府と中国企業なのですが、いろいろなチャンネルを通じて、中国の影響力が至る所に及ぶきっかけが増えてきているように見えますが、どうでしょうか?
戦争の長期化でウクライナが世界から見放される可能性も
ロシアとウクライナの戦争は激化と長期化の様相を呈していますが、NATO・G7サイドも、ロシア・中国サイドも、そして第3極たるグローバルサウスの国々(インド、インドネシア、ブラジル、南アフリカなど)とトルコは、すでにPostウクライナの世界における主導権争いに関心を移し始めています。
戦争が長期化し、ウクライナへの欧米諸国からの支援が滞りがちになるような事態が生まれた時には、もしかしたら、ウクライナは世界から見放され、ゼレンスキー大統領フィーバーも突如覚めて(冷めて)、ウクライナ国内での政争が再燃し、その炎が周辺国に延焼していくという、とんでもない状況に発展することになるかもしれません。
EU、NATO、G7の国々はどこまで本気でその阻止に乗り出すのか。そしてそこで日本はどのような役割を果たすのか?
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