世界がウクライナを見捨てる日。戦況次第で支援から手を引く米国の裏切り

sk20230623
 

6月18日に訪中し、翌19日に習近平国家主席との面会を果たしたブリンケン米国務長官。しかしアメリカの「軍幹部同士の対話再開」の要求に中国側は首を縦に振ることはありませんでした。この結果に対して憂慮を示すのは、元国連紛争調停官の島田久仁彦さん。島田さんはメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で今回、中国との軍事的な対話チャンネルの再開が見通せなくなった米国がウクライナ支援から手を退く可能性を危惧するとともに、そのような状況下で日本がどのように動くべきかについて考察しています。

“失言癖”で反撃。バイデンが習近平を「独裁者」呼ばわりした訳

バイデン政権が発足してから初めて中国を訪れた閣僚となったブリンケン国務長官。

到着後、秦剛外相、実質的な外交トップを務める王毅政治局員と長時間にわたって会談・協議し、国際社会の注目は【果たして習近平国家主席はブリンケン国務長官に会うのか?】という一点に向けられました。

結果的には習近平国家主席とブリンケン国務長官の“面会”は実現したのですが、その“面会”の設えは非常に印象的なものでした。

冒頭の握手こそ横に並んで行われましたが、実際の“面会”は、習近平国家主席が全体を仕切る位置に座り、カメラから見て左側にアメリカ政府代表団、右側に中国政府高官が座るという設えでした。

これが何を意味するのか?

「ブリンケン国務長官は、習近平国家主席のカウンターパートではなく、直接会談や協議を行う対象ではない」という強いメッセージではないかと考えます。

CNNやBBCは「習近平国家主席はまるで皇帝のような印象を与え、アメリカの国務長官の訪問・謁見を受けているようにふるまっていた」と伝えているように、習近平国家主席はブリンケン国務長官に対して“何をすべきで、何をすべきでないか”を説くことはしても、ブリンケン国務長官の意見は求めないという姿勢を貫いたように私は見ました。

ある描写ではイギリス政府からの使節団を迎えた中国皇帝の姿(注‐これに激怒した英国政府がアヘン戦争を中国に仕掛けたと言われている)と重ね合わせるような表現がなされていましたが、今回はどうだったでしょうか?

これでアメリカ政府が怒っていきなり中国に対して戦争を仕掛ける可能性はないですが、“失言癖”を持つバイデン大統領は早速、演説の中で習近平国家主席を独裁者と表現をし、しっかりとカウンターパンチをお見舞いし、「アメリカは中国の上から目線の姿勢を許容しない」ことを示したと思われます(ただし、どの口がいうのか?という冷淡な皮肉が各国から寄せられていることは、報じられていませんし、ただの失言だったという可能性は決して否定できません)。

しかし“習近平国家主席がブリンケン国務長官に会った”という事実は、中国側の強硬な姿勢の中で、本当にぎりぎりの線で放ったメッセージで「中国としてもアメリカとの直接対決は望まず、互いに敬意をもって、それぞれの意思を尊重する付き合いをする」という姿勢を表現したものだと考えます。

アメリカ政府側がそのメッセージをそのように受け取ったかどうかは分かりませんが、経済面での歩み寄りや緊張緩和、そして気候変動問題への取り組みといった分野では協調に向けた協議を進めることとなったようです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 世界がウクライナを見捨てる日。戦況次第で支援から手を引く米国の裏切り
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け