ワグネルの動きを察知しながら動かなかったMr.アルマゲドン
2つ目のシナリオは【プーチン大統領・プリコジン氏・ショイグ国防相とゲラシモフ統合参謀本部議長、そしてルカシェンコ大統領による大掛かりな劇】です。
これは以前からお話ししている茶番・お芝居という見解に近くなりますが、ウクライナ政府やその背後にいるNATO各国、そして国連などに対する情報戦という見解です。
これはわずか1日ほどで歴史的な反逆が幕引きされたことや、ロシア軍副司令官(スロビキン氏)が事前にワグネルの動きを察知しながら動かなかったことから推察できます。
スロビキン副司令官(Mr.アルマゲドン)については、6月29日にFSBによって逮捕され、「ワグネルと近かったがゆえに今回のクーデター未遂に協力していた」疑いで連行されたとの情報が入りましたが、その行方については不明という情報もあり、スケープゴートにされたのではないかとの懸念も浮上する事態になっています。
彼が一旦総司令官に命じられながら、急にゲラシモフ統合参謀本部議長を総司令官にして、スロビキン総司令官を副司令官に“格下げ”したニュースを覚えていらっしゃるでしょうか?
その時には「プーチン大統領はこの戦闘がうまく行かなかったときに責任を取らせるために、ゲラシモフ統合参謀本部議長‐スロビキン司令官ラインを作ったのではないか」とお話ししましたが、今回、空前の裏切りとクーデター未遂の責任をスロビキン氏に負わせる形を取り、一刻も早い事態の収束を狙っているように見えます。
ニュースでは同時にプリコジン氏への訴追と捜査は終了と言われていますが、個人的にはFSBはプリコジン氏を何らかの形で訴追するために捜査を継続していると言われています。
その例が、プーチン大統領お得意の【汚職疑惑での面子潰しと資金繰りの断絶からなる社会・経済的な抹殺】を長年の盟友であったが、自身に牙をむいたプリコジン氏にも行うべく、子飼いのFSBを使っているというものです。
表向きは仲介の労を取ってくれたルカシェンコ大統領の顔を立てる形で訴追と捜査の終了をアナウンスしたものの、それは現在、対ウクライナ戦争を遂行する中で、ワグネルと一戦交える余力がないと判断して、表面的な手打ちを行っていますが、実際には【プーチン大統領は強いリーダー】という絶対的なイメージを損なうことは許されないことから、今後、プリコジン氏に対する復讐と攻撃が開始されるものと考えます。
ルカシェンコ大統領は今回の劇場の重要な役回りを演じたことになりますが、これが本当に仕組まれた劇なのだとしたら、どうしてプーチン大統領はルカシェンコ大統領をこの劇に登場させ、花を持たせたのでしょうか?
一つ目の可能性は【常にベラルーシをロシアと連結した共同国家体と見なしており、権力基盤が危うくなったルカシェンコ大統領を救った貸しを返させた】という見方です。
二つ目は【実は本当にプーチン大統領が頼れる相手がルカシェンコ大統領しかいなかった】という悲しい現実という見方です。
どちらかは分かりませんが、その背景には微妙な力関係があるようです。
それはロシアとベラルーシの共同国家体としての連結状態が、実はルカシェンコ大統領にとっては、いずれロシアに吸収されるのではないかとの恐れの根源になっており、それを払しょくするための設えということも言えるかと思います。
ルカシェンコ大統領としては、プーチン大統領に対して手を差し伸べ、ロシアと共にあることをアピールすることで、ベラルーシの独立を“今は”保証させる対価を得たように思いますし、プーチン大統領については、面子を守ることに繋がっています。
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