裏切り者は許すまじ。プーチンが開始するプリコジンへの復讐と攻撃

 

武装蜂起への関与を全面否定する米国が恐れていること

しかし、これでロシア国内外の混乱は収まっていません。

まず今、戦争状態にあるウクライナ政府とゼレンスキー大統領については、ロシア国内の混乱・内乱をクローズアップし、「今こそ、一気呵成にロシアを叩くべき」とNATO諸国に武器供与の増加と加速を訴えかける外交戦に出ています。

またロシア国内の反政府派にも声掛けをし、ロシアを内側から崩すという企ても主導しています。

問題は肝心のNATOが若干冷めているように見えることです。

ロシア・ベラルーシと国境を接するポーランドとバルト三国の首脳は挙って【ロシア国内の混乱とワグネルのベラルーシ入りの余波が自国にまで及んでくることへの非常に強い懸念と危機感】を表明し非常に警戒しています。

ここで問題になるのは【これらの国々は最前線に位置するが故に、これを機にウクライナに対する態度を変えるのではないか】との見解です。

今回の危機感の表明は【ウクライナを盾にするために、ウクライナへの支援を強化すべき】という【対NATOへのメッセージ】と捉えるか、【ウクライナを静かに見捨て、支援を止めて代わりに自国の防衛力強化に転換する】という意思表示なのか、どちらにも取ることが出来ると見ていますが、果たしてどちらでしょうか?

次に事務局長のストルテンベルグ氏については、NATO加盟国の防衛のために協力を強化すべきと強調するものの、近々退任すると思われ、どこか具体性に欠ける遠吠えにも聞こえるのは私だけでしょうか?

そしてNATOによる対ウクライナ支援のメインプレーヤーたちの反応もまちまちです。

欧州の主要メンバーである英国、フランス、ドイツ、イタリアについては、ワグネルの乱の後、懸念は評するものの、前のめりで鼻息の荒いウクライナ政府とは少し距離を取っているように思われ、同時に今回の不可思議な出来事がロシアとその周辺国においてどのような展開を見せるのかを遠目に眺めているようにも見えます。

本当にこれはプーチン大統領の御代の終わりの始まりなのか?それともカモフラージュで、国際社会の目くらませに利用して、その間にウクライナ戦を終結に向けた本格的な攻勢を準備しているサインなのか?または、バルト三国が恐れるように、ワグネルを用いた新しい作戦なのか?

いろいろな可能性・シナリオを立てて、様子見を決めているように見えます。

では対ウクライナ最大の支援国・アメリカはどうでしょうか?

こちらについては、事前に掴んでいたかどうかはともかく(掴んでいたようですが)、ワグネルの乱が勃発してすぐに「アメリカ政府は一切、ワグネルの乱に加担しておらず、一切関与していない」と自らの関与を全面否定することに集中しているように見えます。

プーチン大統領がぶちぎれてしまったら、もっとも恐れる核戦争による直接対峙という可能性が一気に拡大しかねないと考えているからです。

ただ本当にワグネルはプーチン大統領に弓を引いたのかについては、アメリカ政府内でも疑問が大きく、現時点ではプーチン大統領をこれ以上刺激しない方針を取っているようです。

ではロシアを支える中国の反応はどうでしょうか?

こちらについては一応驚愕しているようですが、様々なシナリオと可能性の前に、情報を収集すべく、ワグネルの乱発生直後には、すでに外交的な対話を連発し、基本的にはプーチン大統領によるロシア国内治安維持のあらゆる行動を強く支持する姿勢を貫いています。

そして、あまり報じられていませんが、今回のワグネルの乱を受けて、中国国内の反対分子に対しての監視レベルを一気に高めて、万一の場合に備えるべく、北京はもちろん、上海などの主要都市に加え、新疆ウイグル自治区との境の守りを強化したようです。

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